複雑・ファジー小説
- Re: 運命は廻る、未来は踊る 〜時渡り編〜 ( No.20 )
- 日時: 2011/12/02 16:38
- 名前: 花影 ◆wNp4n0Oqx2 (ID: 3IH6VK8y)
第一章〜時渡り編〜
ACT5「魔法」
現れた二人はぐるりと部屋を見回すと、手近な椅子に腰を下ろす。
一人は2mは超えるかという巨躯の持ち主。
もう一人はおっとりした感じの茶髪の少女。
「さて……。状況の……説明をしてもらえないか?」
髪をオールバックにした巨体の青年が、もう一度部屋を見回して口を開いた。
今一度部屋の状況を確認してみると、この部屋には10人掛けの長机に、二人掛けのソファーが二つ、机を挟んで向かい合わせに置いてある。
そして、ソファーの近くではカイトとカノンが喧嘩をしており、長机にはリンとセン、シュナとルカが座って喧嘩の行く末を眺めていた。
──で、これが現在の状況なのだが……
確かに、説明がなきゃシュナたちがいるのはおかしい。それは、シュナにも納得できる。
「それで……、大体は予想がつく。……が、一応説明をお願いできないか?」
「うん。私が説明するよ。
シュナたちのことは大体予測できていると思うけど、彼女たちが例の。で、こっちついたらカイトと一緒にネリウス側との戦闘になっちゃったんだ。それで終わったあとにカノンと合流して現在の状況にいたるわけなんだけど……」
そういって彼女は視線をソファーの方へずらす。と、そこには取っ組み合いしたまま固まっているカイトとカノンがいた。
青年も二人を見つめていたが、ふと視線をずらしてシュナたちを見据える。
そして頭を下げ、
「俺は……ザイゴ・フリード。このレジスタンスのリーダーをやらせてもらっている。……二人には悪いが、……これからは力を貸してもらうことになると思う……、以後……よろしく頼む」
そこで、それまで傍観していた少女が立ち上がると
「私はユマ。副リーダーをやってるよ。なにか分からないことがあったら教えるから言ってね〜」
くるりと一回りして彼女は椅子にまた座る。ザイゴも気づけばまた椅子に座っていた。
それを確かめると、シュナとルカは同時に立った。
「私はシュナ。リン──彼女の力でここに来たわ。得意魔法は火炎系よ」
「ぼくはアリュルカ。ルカって呼んでくれればいいよ。ぼくの得意魔法は水氷系なんだ」
言って、ルカとシュナはお辞儀をする。
と、そこで。ずっとカイトと取っ組み合いしていたカノンがびしっと手を上げた。
「そーだ! 二人ともちょっと魔法を見せてくれないかしら?」
──魔法。
それは世界を構成する〔マナ〕を使用して事象を改変する力のこと。その力はすべての人が持っているわけではないが、特殊な道具などを使用すれば一般人でも使用することが可能である。
「だってね、魔法とかの文献ってなかなか残ってないんだよね。だから、参考程度に見せてくれるとすっごく嬉しいんだよね〜?」
意地悪な笑みを浮かべてカノンが二人ににじり寄る。
「い・い・よ・ね・?」
「あ……、二人ともそんなに警戒しなくても大丈夫だよ。カノンは元研究学者だから、ちょっとね……」
見かねたリンがそっと口ぞえする。
しかし、それに気づいた様子も無くじりじりと二人にちかずくカノン。
「や、カノン怖いって。分かったからストップ! 見せればいいんでしょ? 簡単なのでいい?」
カノンから必死に逃げてシュナは言う。ルカも隣で首をすばやくに縦に振っているから、同意ということだろう。多分だが。
その言葉をきいて、やっと少し落ち着くカノン。しかし、こんなに性格は変わるものなのだろうか。
「じゃ、外いこう! どうせ今頃魔道訓練してる奴らもいるだろうしね!」
カノンは、シュナの肩をガシッと掴むと、ずるずると外に引きずって行ってしまう。
「ちょ、待ってよ」
ルカも慌てて彼女たちの後を追った。
●
「ここよ。ここが魔道訓練場。といってもこんなご時世だからちゃんとしたのなんか無理だけどねー」
魔道訓練場はレジスタンス本部から1分もかからない位置に、防御用魔法シールドをかけられて佇んでいた。
シールドが張ってあるとはいえ、3mほどの壁に囲まれた屋外だ。中ではいくつもの魔法光が飛び交っている。
「じゃあ、見せる前に一通り私の知ってる魔法形態をさらりと説明するけどいい?」
はーいと声が上がったのを確認し、シュナは魔法で出されたスクリーンに、これまた小枝を媒介にして作られたスクリーン用のペンを使って文字と図を書き込んでいく。
「じゃあ、まず魔法発動プロセスだけど。
これは、世界を構成する小さな粒子〔マナ〕の力を使用して、事象を変えることを一般的に魔法と呼びますが、正確には世界を構築する〔マナ〕の情報を改変することで魔法は発動します。よって、魔法の使える・使えないはこのマナを改変させる力があるかどうかによるんだよね。そして、この力はある程度子供に受け継がれます。よって、有力な魔法使い同士の結婚が多いんだよねー」
シュナは文の重要な部分に、赤線や丸を書き込んでいく。
「さて、それでは魔法の分類ですけど、これは発動方法と属性とで別々に分けることが出来ます。
まず発動方法。──これは大きく分けて二つに出来ます。ひとつは紋章魔法。もうひとつは詠唱魔法。紋章魔法は空間にマナの粒子で魔方陣や文を書いたりして発動させます。紙などを媒介にしても発動できるところがこの魔法の特色かな。このタイプの発動方法は詠唱がいらないところと、魔方陣や文字を書き込むことで、周囲からも改変の力が得られて比較的発動しやすいこと。マジックアイテムと呼ばれるものは、木や紙などに魔方陣などを書いたり、彫ったりしたもので、この紋章魔法に入ります。この発動タイプは、主に改変の力が弱い人が使います。
次に詠唱魔法。これはその名のとおり呪文を唱えるタイプで、周囲から改変の力をまったく得られませんが、発動スピードが速く、とっさに魔法に手を加えたり出来るので、戦闘系の魔法使いはこちらを使う方が多いかな」
そして、次に
「属性は全部で6つにわかれていて〔火〕・〔水〕・〔地〕・〔風〕の四大+〔闇〕・〔光〕となっています。また各属性のなかでも細かく分かれるけど、細かいのでそれはおいとくよ」
最後にピッと赤線を引くと、シュナは辺りを見回す。
いつのまにか、訓練場で訓練していたメンバーもここでシュナの説明を聞いていたようで、魔法光は確認できなかった。
周りを見回して満足そうにうなずくシュナ。
「ありがとう! ほとんど今と変わんないのねぇ。まぁ、違ったところは後で教えるよ」
もう一度カノンはありがとうと言うと、シュナとルカの肩をガシッと掴んで訓練場の中央に連れて行く。
「んじゃ、実技お願いね☆」