複雑・ファジー小説
- Re: 運命は廻る、未来は踊る 〜時渡り編〜 ( No.23 )
- 日時: 2011/12/24 17:53
- 名前: 花影 ◆wNp4n0Oqx2 (ID: 3IH6VK8y)
第一章〜時渡り編〜
ACT6「力」
シュナは手元で今現在構築している魔方陣を眺めていた。
……ここの魔法強度は、そこまで高くなさそうだが……
ズボッと手元に構築された魔方陣に手を突っ込んで、細かい部分を書き換える。
「ほいっと」
それを、カノン含めるレジスタンスの全員が興味深そうに眺めていた。
──ちなみに、ルカはシュナのあとである。
「んー。作ったあとの魔方陣に手を加えるなんてどんなセンスよ……」
「ありえないほどの、魔法に対する知識、か……」
やや呆れ気味にそう呟いたのは、カノンとユマ。
その隣で複雑そうな表情を浮かべて、ルカは黙り込んでいた。
たった今目の前で見せ付けられた、シュナの実力。
戦士としてみるならば。体力などすべての総合力ならば、ルカが上であろう。
だが、純粋な魔法に対しての知識と能力ならば、彼女のほうが二周りどころか四つほど以上も上だろう。
そして……。彼が目指しているのは魔法のスペシャリストである。一族としての力ならば彼のほうが上であり、魔法の勉強もいち早く始めた。
それでも。彼女のあのセンスには勝つことが出来ない。彼女の魔法に対する力に勝つことが出来ない。
────どうしようもない圧倒的、差。
「GO!」
シュナの掛け声が空間を走り抜けた。
声と同時にマナの光が世界を満たし──刹那には火炎球へと変化する。
火の塊はそのまま直進し、結界に触れると同時に結界を揺らして火の粉を飛ばし、消失した。
おし!
シュナは手もとで小さくガッツをとる。
「おぉぉぉぉおおおおおおお!!!!すごい!」
ごすっ
シュナの横っ腹にカノンが体当たりを仕掛けた。力の流れにのっとって、シュナが横へ転がっていく。
……カノン……体当たりで感情表現っておかしいでしょ
そんなことを思いつつ、痛みをこらえてシュナが立ち上がると、勢いよく両手首を掴まれた。
正面にはカノンの輝いた瞳があり、
「あんた……。すごいのね」
背後から声をかけられた。
振り向いた先には青空に映える金の髪がゆらゆらと左右にゆれている。
「今のレジスタンス内じゃ、あんたに匹敵するのはいないよっ」
太陽光に淡く煌く翡翠の瞳に、スラリと高く伸びる背。胸元はやや押さえ気味で中世的な顔立ち。
そして、一番に目に付くのはその金髪。
「あ、紹介するわ、シュナ。彼女はサラン・リグナール。特技は嘘つきよ」
にっこり笑って言うカノンにサランは、
「その紹介は納得いかない! ……言うなら戦闘が好きかな」
「いや、どこが違うのよ」
言い合いを始める二人をよそに、いつの間にか隣にいたユマが話しかけてきた。
「二人は昔からの付き合いでねー。よくあんなふうに言い合いするんだ」
……言い合い……?
素朴な疑問を持って見やるシュナの視線の先には、互いに武器を取り出している二人がおり、
「だいたいはここまでなんないんだけどね……」
呆れたようにため息をついたユマは、二人を仲裁するために、足取り重く二人の下へいく。
一人残されたシュナのところに、ルカが右手を上げて走ってきた。
「シュナ〜!さっきの魔法どうやって考えたの?」
その表情は、好奇心から聞いているということがありありと分かる表情だ。
しかもすごく生き生きしている。
「え?あれ?」
「うん。そうさっきの」
「あぁ、あれは『炎球』の術式を強化した奴」
手振り身振りを交えて説明するシュナ。始めは、ルカしか聞いていなかったのだが、気づけば何人もシュナの講演(?)に参加していた。
しかしその反応は三者三様で、メモを取る者、顔を訝しげに歪める者、ただ静かに見守る者。
そこで一人──ルカが手を上げた。
「ねぇ、シュナ。何で今回は紋章呪文を使ったの?」