複雑・ファジー小説
- Re: ブレイズ・ブレイク! 〜時渡り編〜 オリキャラ募集! ( No.8 )
- 日時: 2011/10/29 18:56
- 名前: 花影 ◆wNp4n0Oqx2 (ID: 3IH6VK8y)
第一章〜時渡り編〜
ACT2「時渡りと襲撃者」
「けど、魔法特異能力者なんてそうそう、いないんだけどねぇ」
「今と未来は違うんだと思うけど?」
物珍しげに呟くルカに、シュナは少し声のトーンを落として答える。ちなみに、ルカとはアリュルカの愛称だ。
「未来には、それなりに人数いたんだけどね……」
故郷を思い出すような声音でリンは呟いた。その様子に二人は、ばつが悪そうに顔を見合す。
リンは未来から来た少女だ。そして、今、未来はこの時空間から助けを求める必要がある状況なのだ。
「でも、行くなら早く行きたいのだけれど……」
少し困ったようにリンは尋ねる。それに二人は顔を見合わせ
「「今から行こう!」」
一瞬リンが固まった。と、硬直が解けたと思ったら……
「え?えっ?!ちょっと待って!あのさ、今って現地実習でしょ?現に、シュナはさっきから通信きってるよね?!」
「いや、だって、ディスプレイ通信でとんでくるし」
そういってまた、現れた画面をシュナは手刀で叩き割る。顔には何も言うなと言う無言の笑顔が張り付いていた。それにルカまで固まってしまう。
「あ、うん。分かったよ?うん。分かってるだから少し落ちつこうよ」
「そう?」
ルカの必死の弁明にシュナの機嫌が多少良くなる。そこですかさずリンがしゃべりだす。
「そうだよ。だからとにかく落ち津つこ?」
リンが必死になだめているとルカが、シュナをちょいちょいと手招きした。
ルどこから出したのか、シュナにお茶を渡す。眠気覚ましようのミント茶のようだ。
「ふぅ、ありがと」
「いえいえ」
その二人の光景をようやく安心して、ニコニコと眺めていたリンがふと、声を上げた。
「行くなら、もう送っちゃうけどいいの?まぁ、私も一緒に移動するけれど……」
「うん、もうこのままでいいよ」
「そうだね。今は模擬戦中でハードパーツを装備しているから、それなりに安全だ思うし。まぁ、この場合士官学校のものをパクッたことになるのかな?」
ルカの言葉に盛大にうなずいたシュナは笑った。
「まぁ、そっちのほうは戻ってから考えよ?
とにかく行こ!急ぎでしょ?」
「ありがとう」
リンは今にでも涙を流しそうなくらいに二人の手をぎゅうっと握る。予定ではシュナ一人だったけど、一人増えたくらいならそんなに負担はない。それに、シュナにも一人くらいはちゃんとした知り合いがいたほうがいいと思うから……
三人は手をつなだまま笑いあった。大きな光が洞窟を満たしていく。しかし、光は外へは漏れなかった。少しずつ光が収縮する。光が消えたときには、もう、三人の姿はなかった。
この時代には。
●
どこまでも続く空をシュナは見上げる。いつもと同じようでいつもと同じところなんてひとつもない空。周りの景色はぜんぜん違うけど、見上げる空の景色はいつもと同じだった。
時を越えても変わらない空に、僅かな安心感をシュナは覚える。
「リーン!戻ってきたなら早くこっち来い!」
シュナたちの前方の、崩れた建物の瓦礫の上で黒髪の少年が手招きをしている。とても急いでいるようだ。
どうやらリンの知り合いらしい。
「ここは、そろそろ現れるからさ、って!きやがった!リン、いそげ!」
瓦礫の上から少年はクルリと一回転して、シュナの隣に降り立つ。少年はシュナをまじまじと見つめると
「ふーん・・・。まぁいいや。急がねぇと襲われるぞ?」
なによっ!?と、シュナは反射的に叫びそうになったが、ぎりぎりのところで踏みとどまる。
クイッと親指でシュナの背後を指す少年。そこには見たこともないモンスターがあふれ返っていた。今まで見てきた自然系のものとは明らかに違う、鉄で覆われたモンスター。
それは、軍で研究されていた『ロボット』にとても近い形をしているような気がした。
「なにあれ……?」
「そんなのは後だ。とにかく今はあいつらを片付けるのが先だ」
シュナの返答も聞かず、少年は鉄の軍隊に走りこんでいく。その後ろ方はあたかも黒い風を思わすような滑らかな動きだった。
その動作のどこにも、無駄な力が入っていないことが分かる。
「シュナ!今はボーとしてる暇はないよ!死にたいの?!」
背後から声をかけられて、シュナは反射的に振り返る。
ルカもいつの間にか右手に刀を握っていて、少年の後ろに走り出していた。その姿にシュナはにやりと笑うと
「やってやろうじゃないの!」
二人の後に続いて走り出した。その手には小ぶりのランスが握られている。
三人は示し合わせたでもなく、互いを傷つけないように戦闘を開始した。