複雑・ファジー小説
- Re: .。○天魔の鎖●.. ( No.25 )
- 日時: 2012/05/02 22:17
- 名前: 汽水 ◆8DOUeLxBGc (ID: 1EjfiyJS)
第16話 先に進むにも道が暗すぎて
—地平線の見えるとこ—
結局手がかりゼロで出発することになった。
「うひゃー、見て、地平線!!」
目をキラキラさせ地平線を眺めるナナ。
「そうか」
「見たことなかったんだよー!!」
「…………」
呆れたようにリュウセイは少し笑った。
そしてまた暫く歩いていると、向こうから人がやってきた。
私は無視して通り過ぎようとしたが、
「もし、そこの人」
案の定話しかけられました。
ま、分かってたさ、こんな展開……。
その人は紺のずきんをかぶっていて、顔が見えなかった。
「は、はい?」
「道に迷ってしまって……」
声は女の人だなあ。
「案内しろと?」
突き放し気味に言ってみる。
こうすればどこかへ行ってくれると思ったからだ。
「そうしていただけると助かるのですが……」
ですよねー。
そんな事で諦める人、居ないよ。
「……あ、私急ぐので」
早急に逃げようとするナナ一行。
「……逃げるな」
いきなり低い、男の声だ。
「「!?」」
「お前等、感づいているのだろう?」
何を!?
っていうか何で!?
人はずきんを脱いだ。
青いライオンだ。
こいつ、まさか——……。
「……誰?」
誰だコイツ。
私は知らないぞ?
「お前の知り合いじゃ……」
ワケの分からない顔をするナナとリュウセイ。
「オレは刺客だ」
「刺客? もしかしてあのライオン?
でももう一匹いなかったっけ……ブツブツ」
「俺は正真正銘あの時の刺客だ。」
理解したら物凄く驚いた。
顔はよく覚えていなかったし……。
「ナナ、離れろ。
何かしかけてくる。」
リュウセイが私の前に立った。
「お前の力を奪い取れなかったからな。
あの方がお怒りなのだ……。」
あの方……?
素早く青ライオンに口に何かを当てられ、気を失ってしまった。
暫くして、目を覚ましたが、ここがどこだか分からない。
真っ暗な空間だから周りが見えないのだ。
それに、縄で縛られていて動くことができない。
「…………!」
私は、リュウセイのことを思い出した。
「リュウセイ……、居る?」
返事がない。
「リュウセイ?」
返事は……やはりない。
「リュウセイ!! リュウセイってば!!」
何度も何度も名前を呼んだ。
失うのは嫌だ。
また一人ぼっちになるのは嫌だ……。
「ねえ、リュウセイ!!」
「……うるさいな、少しは静かにできないのか。」
「リュウセイ!?」
聞き覚えのある声がして、心底安心した。
リュウセイは生きてるんだ……!!
良かった……。
「……ほんとに良かった」
涙を拭いたかったが、縛られていて拭うことができなかった。
「……俺は簡単に死んだりしない。
安心しとけ。」
この声で私がどれだけ安心したか、言葉では表せない。
リュウセイまでどこかに行っちゃったら絶望のどん底に沈んでしまうだろう。
「……うん……、ありがとうリュウセイ」
……私は人に甘え過ぎてるのかもしれないな。