複雑・ファジー小説
- Re: .。○天魔の鎖●.. ( No.32 )
- 日時: 2012/02/28 23:12
- 名前: 汽水 ◆8DOUeLxBGc (ID: 1EjfiyJS)
第18話 リュウセイの過去
縄を解いた私達は、真っ暗な闇の中を進んでいくこととなった。
途中、所々水溜りが何故かできており、踏むたびにピチャピチャと音が鳴った。
それに加えて、時々呻き声がする。
それが不安を煽り、私の精神状態はギリギリだった。
ただでさえ拉致されているというのに……。
こんな時、杖があれば光を照らせるのに、と思う。
「りゅ、うせい……」
「どうした」
「見えるの? 周りが……」
「見える。
見えなくていい者達まで、俺の眼には映る。
お前も、聞こえるだろう。
見えなくても、聴覚は反応する。
呻き声、それはここで死んだ奴等の声だ。」
「……怖いよ」
「怖いなら、最初からこんな所までくる必要なかったんじゃないのか。」
「でも、兄ちゃんとアルス、心配なんだもん……。」
「死んでたら、どうするんだ。」
「——え?」
歩きながらリュウセイにそんなことを訊かれた。
「その、兄ちゃんとアルス? とかいう奴が……もし死んでたら。
お前はどうするんだ。」
「……そんなこと考えたことなかったよ。
兄ちゃんとアルスは生きてる。
その確信があった……。
なんの、根拠もないのに。」
「それで俺を振り回してるのか。
冗談じゃないな。」
フッとリュウセイは笑った。
「でも、何も根拠もないのに……。
走り続けるなんてな。
そういう奴は嫌いじゃない。
昔の俺もそうだったから。
俺には昔、死ぬ覚悟を持ってまで追いかけていた奴がいた……。」
—回想—
あの日 見たんだ
大空を飛ぶ、紅い龍の姿を——……、
俺は一人、山の頂上に建っている家に住んでいた。
まだ幼かったというのに……。
いつもいつも空を見上げていた。
そこには色んなものが見えた。
形の変わる白い雲、海の青色を流し込んだ様な青い大空。
絵本で見たような、龍がいつか現れるのではないかと俺は信じていた。
— 竜 族 は も う 息 絶 え た と い う の に —
「おばちゃん、またあの本貸して。」
「おやまあ……リュウちゃんはあの本が本当に好きなんだね。」
よく麓に降りていき、図書館で神話≪紅い龍≫を借りた。
何度読んでも飽きない。
「その本、リュウちゃんにあげるよ。」
「!? いいんですか……」
「その本も喜んでるよ。」
「ありがとうございます。」
頭を下げ、図書館を出た。
すると周りに子供が集まってくる。
「リュウセイ、またその本借りたのか!?」
「本当に龍なんて信じてるのかよ〜……」
「もう絶滅しちゃったのよ?
理解できる?」
煩わしい。
信じていて何が悪いんだ。
「俺は、龍はまだ生きていると思う」
「「「馬鹿でーい!!」」」
その場にいた皆が俺を馬鹿にする。
俺は無視し、家に戻った。
「何が馬鹿だ、お前ら全員マザコン(ファザコン)のくせに。」
この本に出てくる紅い龍『ソル』
ソルは太陽の龍だ。
他にも炎 水 草 月 闇 光
その龍達の力を併せ持つ龍……七色の龍と呼ばれる龍。
それを探しに行くソルは、本物の太陽になりたい。
龍にも心はある。
輝く、光の心が——……。