複雑・ファジー小説

Re: .。○天魔の鎖●.. ( No.6 )
日時: 2012/05/02 17:52
名前: 汽水 ◆8DOUeLxBGc (ID: 1EjfiyJS)

第2話                            平和(?)っていいな

家に帰ると、知らない男がいた。
ほぼ間違いなく空き巣だろう……。

みんな食べる物に困ってるんだから。

「こらあっ!!」

兄ちゃんが空き巣を怒鳴る。

「俺等だって食糧が足りてないんだ!!
 それなのに盗むなんて……。」

「兄ちゃんも前はゴロツキだったよね?(ボソッ」

ナナが何気なーく毒舌を吐く。

「察してやれよ……(ボソッ」

アルスがナナを諭す。

「うっ……。
 とにかくっ!!
 
 二度とこういう事はするなよ!!」

空き巣は帰って行った。
絶対またやるよな……。

「空き巣さん!!
 今度やったらマルルーモで殺すよー」

「ひっ」

空き巣は逃げて行った。
マルルーモは最強の闇魔法だからなあ……。

っていっても私はルーモしか使えないけど……。

「兄ちゃん、本当に食糧少ないねえ……。」

「しょうがねえだろ……。
 地主が持ってっちまうんだからよ。」

「地主は税金だとか何とか言って持ってっちゃうんだよね……。
 あーあ……私もイルームの奴のところに働きに行って飯食わせてもらおうかなあ……。」

「……ナナ」

「……分かってる。」

「あんな奴の所へ行ったら、昔に戻っちまうぞ。」

「……うん。」

アルスは訳が分からないという顔をしている。
しょうがないよね。

アルスと私が出会ったのは……私が拾われた1年後だもん……。

—回想—

家で兄ちゃんを待っていると、兄ちゃんが帰ってきた。
隣には薄紫色の髪を後ろで縛った男の子がいる。
紫の目は虚ろで光が宿っていない。

「兄ちゃん?
 誰? その子。」

まるで……昔の自分を見ているようだ。

「そういや、名前聞いてなかったな……。
 名前、なんてーんだ?」

「……今はアルス・セリーニだよ。
 俺、買われるたびに名前変わるから。」

アルスは淡々とした口調で言った。

人身売買、か……。
やっぱり昔の自分を見ているみたいだ。

「兄ちゃん、アルスを買ったの?」

「いや……そのへんうろついてたから……。」

昔の自分じゃん!!
過去に戻った気分だよ……。

「アルス、私はナナ・アニス。
 これから宜しく」

「よろしく……。」

—回想終わり—

「でもさ、変な生き物とか現れてないからいいじゃーん」

「たしかに……。」

「空き巣とかいるけど……平和(?)っていいな」