複雑・ファジー小説

Re: .。○天魔の鎖●.. ( No.7 )
日時: 2012/05/02 18:04
名前: 汽水 ◆8DOUeLxBGc (ID: 1EjfiyJS)

第3話                             突然の悲劇(微グロ注意)

「ふぁぁああ」

朝、家の近くの木の上で寝ていた私は物音で目が覚めた。
なんの音だあ?

木から飛び降り、辺りを見回した。
どうやら音は家の方からだ……。

『……だ』

『……だな』

誰か喋ってる……。
でもよく聞こえないなあ……。

私がひょこっと家の前に飛び出すと……。

「うそ……」

家の前には赤い液体が飛び散っていた。
鉄の匂いがする……。

でもそこにはアルスと兄ちゃんはいなかった。
代わりに青と黄色の雄ライオンの二人組が立っている。

「……コク、例の……」

「ああ……レイ、やるぞ。」

「……ちょっと、あんた達!!
 この血、誰の血よ!」

青いライオンと黄のライオンを怒鳴りつけた。

「……さあな」

知らん顔で青ライオンが言う。

「答えなよ!!
 あんた達がやったんでしょお!?」

涙が溢れて飛び散った。
……ねえ、これって……兄ちゃん達の血でしょ……?

「……レイよ、早くせねばあの方のお怒りに触れる……。」

「そうだな……コクよ。」

「な、何する気ッッ!!」

ライオンがこっちににじり寄ってくる。

「お前の力を貰う……。」

「な、何の話!?
 私に力なんてないっ……」

ナナが後さずる。

「レイよ、スパティルにも……」

「行かねばならん。
 さっさとやれ。」

次の瞬間、体中に激痛が走った。

私……兄ちゃん達と同じに……、


プツン


意識が途切れた——……。

「……力が吸い取れない……。」

「さすが最後の生き残り……半端なやり方では手に入らんか……。」

「ふっ……あの方のお怒りをまたくらうのか……。」

「まあ、またやればいいだけのことだ……。」

「そうだな……。」

レイとコクは去っていった。

—数日後—

私が目を覚ますと、ベッドにねかされていた。

「うう……」

「よ、良かった!!
 目が覚めたのね!?」

目の前に『ハナ』がいる。

「……ハナ」

ハナは名前の通り花屋の娘だ。
私の友達でもある。

「よかった……。
 ナナ、アナタ家の前で倒れてて……。
 ずっと目を覚まさなかったから……。」

「大丈夫よ……ハナ」

「アルス達は居ないし……。」

「アルスと兄ちゃんはきっと連れ去られたのよ……。
 死んでない、そう信じてる。」

そうだよ、あの血は……兄ちゃん達のなんかじゃない。
きっとさっき思ったことは間違いだったんだ。

……あの血は、誰の物?

「ナナ?
 どういう事?」

「ライオンの姿をした奴等に殺されそうになったの。」

「……それで、どうするつもり?」

「勿論、あいつ等が向かったスパティルへ行くわ。」

ハナの表情が険しくなった。

「やめてよ、ナナ……。
 アナタまで死んじゃったら……。」

「アナタ『まで』って何?
 アルスや兄ちゃんは死んでないのに、なんで『まで』なの?」

「ご、ごめんなさい……。」

ハナが慌てて私に謝る。

「いいよ、別に。」

「ナナ、せめてこれを持って行って。」

ハナが倉庫に行って、戻ってきたときには手に杖が握られていた。

「何でこんな物……。」

「お父さんは魔法使いだったから。

 この杖はブイオよ。」

ブイオ……闇って意味か……。

「アナタも魔法が使えるでしょ?」

「うん、一応……。」

「なら持って行って。
 きっと役にたつ。

 そして——、

 絶対に生きて帰ってきてね。」

「……ハナ」

ハナが手を差し出す。
私はその手に自分の手を合わせた。

そして、

「アナタは生きて帰ってきますね?」

「勿論です」

これがこの世界の約束の方法。

「うん、手を合わせたらナナの気持ち伝わってきた!!」

ハナが笑顔になる。

「本気、なんだね?」

「……うん。」

ほんの少し迷ってからきっぱりと答える。

「アルスとルッツさんは絶対生きてるって私も信じてるから!!」

「ありがとう!!
 じゃあ、私も行ってくるね!!」

ハナの瞳には涙が浮かんでいた。
そして、私の瞳にも——……。