複雑・ファジー小説
- Re: .。○天魔の鎖●.. ( No.9 )
- 日時: 2012/05/02 18:12
- 名前: 汽水 ◆8DOUeLxBGc (ID: 1EjfiyJS)
第5話 スパティル
ついに着いた。
スパティルだ。
この世界で一番大きいだけあって……人がたくさんいるかと思いきやなんだか閑散としてるなあ……。
それに……前見たときと雰囲気が違くない?
中に入ると、なんだかジロジロと視線を向けられてるみたいだ。
何だろう……。
「ちょっとアンタ!!」
地味な服を着た太めのおばさんが話しかけてきた。
「は、はい!?」
「あんた……ライオン共の仲間じゃないだろうね……。」
「ライオン!?
ま、まさか……あの!!」
「なんだい」
「そのライオンはどこに向かいましたか?
私、そいつを追っているんです!!」
「アンタ、やっぱりライオンの……」
違う、そうじゃない。
私は——、
「私、仲間を連れ去られたんです!!
お願いです、教えてください!!」
「……しょうがないね。
私達の街にはね、ライオンが二人来たのよ。
話しかけると、『リュウセイ』はどこだ、って聞かれたわ。
そんな人知らないから、知らないって答えると……。
嘘だ、絶対にここに居るはずなのだ……とか言うのよ。
そして、ある人が……。
『リュウセイ』など俺達の街にはおらん。
とっとと帰ってくれ、って言ったら……。
殺されたのよ……。」
「は?
ここには兵士とかがいないんですか?」
それだけで、殺すだろうか……。
「兵士が一人残らず消えていたのよ。」
兵士……か。
推測するに……殺されたんだろうが……。
そんな事私の聞きたい事じゃない。
「で、そのライオンはどこに?」
「たしか……高台に行ってたわね。
そういえば……高台に一軒家が……。
でも誰の物かは知らないわ。
あの家からは人の気配がしない。」
「分かりました!!
ありがとうございます!!」
そう言ってお辞儀をすると私は高台へ上った。
—高台—
あのおばさんの言ってた通り一軒家があった。
ライオン達の姿はない。
コンコン
一軒家の扉をノックしてみたが返事はない。
「誰かいませんかー?」
コンコン
やっぱり返事はなかった。
「入りますよ?」
カチャ
扉を開けて入ると、何やら音がする。
ジャー
水を流すみたいな音……。
音のする方へ行くと、紅い短髪の背の高い男の子が洗い物をしていた。
「あの……。」
私が呼びかけると男の子は蛇口を捻って止めた。
「この辺にライオンが来たことありますか?」
「…………」
男の子は無言のままだ。
「あのぅ……」
「ライオン……?
ああ、前に来てたな……。」
男の子がこちらを振り向いた。
金色の目が太陽に反射して光る。
「そうなんですか……。」
「ところで……誰だ?
お前……。」
「私ですか?
ナナ・アニスです!!
アナタは……?」
「リュウセイ。
リュウセイ・ラザーノ」
「リュウセイって……ライオンが探してた?」
「……そうだ。
あいつ等ナナが何だとか俺が何だとか言ってた。」
「そうなんですか……。
実は……私、兄を二人連れ去られたんです……。」
「ライオンにか……。」
「はい……。」
「行くな」
断言された。
相変わらずの無表情で。
「それはお前をおびき寄せるための罠だ。」
そんなこと、分かってる。
「そりゃ、そうかもしれないですけど……。
私にはアイツ等に絡まれる心当たりがありません!!
なんで——……。」
「お前は力を持っているからだ。
俺も力を持っているから狙われた。」
「力って何なんですか!!
私はそんなもの持ってません!!」
何でそんなことが分かるんだ。
自分にも分らないのに、何で他人には……。
「俺に言うな。」
「……すみません……。」
「ネス」
「は?」
「ライオンが向かった場所だ。
お前、どうせ行くんだろ?」
「は、はい!!
ありがとうございます!!」
リュウセイの言葉に涙が出そうになった。
なんだか……嬉しかった。
コトン
リュウセイのポケットから何かが落ちた。
それは、
「竜書いてある……メダルの欠片?」
私は天魔が書いてあるメダルの欠片を持っていた。
「私もそれ持ってる!!」
これは私が拾われた時に持っていた物だそうだ。
でも何でその欠片をリュウセイが?
欠片を私が出すと、両方のカケラが光りだした。
「え……?」
「共鳴……反応。」
欠片は近づき、ペタッとくっついた。
「「は?」」
私とリュウセイはただただ床に転がるメダルを見つめるしかなかった。