複雑・ファジー小説

Re: 夕方三時の図書館。 ( No.12 )
日時: 2011/11/13 19:06
名前: 星野由羽 (ID: nFJQXShR)

1 出会いは、図書館にあり。——partⅡ

 とりあえず、図書室に行ってみることにした。
 図書館と来たら図書室だろう。自分でも意味が分からないが、そう思った。
 いわゆる、直感だ。

 二階にある図書室を目指して歩き出した俺の背中を、妖しく、真っ赤に光る夕日が、血のように染めていた。

 ☆ ☆ ☆

 第一図書室。
 第二図書室などないが、皆、なぜかそう呼んでいる。——そんなドアの目の前についた俺は、違和感を感じていた。
 今まで、ワイシャツを染めていたのは赤だった。しかし、ドアの目の前に立つと、赤ではなく、なぜか黒に染めたのだ。

「——司書さんが、カーテン閉めて寝てるのかな?」

 そう思うことにして、ドアに手をかけた、その時だった——。

「お前は、誰だ——?」

 背後から声がした。
 びっくりして振り向くと、そこには、

 見たことのない銀髪の少女とも少年とも言えないような、端正なつくりの人形が立っていた。
 その人形はぴくりと、少し、眉をひそめた。

「僕は人形ではないのです」

 黒い燕尾服の、まるで出ていない胸の上に手を当て、怪訝そうな顔で言う。

「君、その図書館に入りたいのですか? ならば入ればいいです。勝手にしてください。でも、僕もその中に入りたいのです。どいてください」

 俺の返事を待たずに無理やり突破した奴は、くるりと機械的に頭を曲げ、こくりと首を傾けた。

「入らないのですか? ならば、なぜ来たのです? お前は、いったい誰に肯定してもらいたいのですか——?」

 ため息をつきながらドアを開けようとした奴は、俺の手を無理やり引っ張った。
 急なことで、俺は思わず引きずられる。

「さあ、どんなストーリーに、出会いたいのですか?」

 そういって、ドアを引いた——。

 そこに広がっていた空間は、いつもの、本棚と机が並べられた、殺風景な図書室では、無かった。