複雑・ファジー小説
- Re: ボクと誓約の翼 ( No.1 )
- 日時: 2011/11/14 09:51
- 名前: 元吉 ◆8OHUrY3.ic (ID: V89zVUtf)
─────現実世界とは対なる空間に存在するこの世界。
─────ここでは力が全てと言われているのだ。
─────現実世界の人間が想像で生み出した幻獣。
─────その全てはこの世界の生き物なのだ。
─────その名は想獣。
─────この世界に生きる人々は想獣と共存している。
─────そんな世界で人々は富や名声や野望を叶えるために力を求めて動き出した……
「おい。その剣を置いてけ」
「………無理」
一人のフードマントの旅人が七、八人程の山賊に囲まれていた。
「そうか。なら訂正だ」
山賊の中で一番体格のいい頭領らしき男が背中に手をかけた。
「剣と一緒に命も置いてけ!」
男は正面から旅人に向かって斧を降り下ろす!
─────人々は力を手に入れるための努力は欠かさなかった。
─────武術、魔術、機械兵器、錬金術……
─────力のために人間が生み出した物は数知れない……
─────そして、人々はついに最高の戦術にたどり着く……
辺りが砂地だったため、斧を降り下ろした風圧で砂煙が舞う。
「馬鹿め。口ほどにもないですね」
頭領らしき山賊の脇にいた小柄な山賊がにやけた。
だが、その肝心な頭領は顔を強ばらせていた。
砂煙のせいで他の山賊には見えないのだ。
頭領が降り下ろした先にはフードの旅人。
だが、その背中には……
─────そう、人々は一つの最高の戦術にたどり着いたのだ……
─────それは………
「つ、翼……だと…」
─────人と想獣との誓約……
─────そう、想獣の力の一部が人に宿ると言うものだ……
「行くよ。ハーピィ……」
翼で斧の攻撃を完全に防いだ旅人──の少年はそう呟くと瞬時に姿を消した。
「逃げられたか……なに!」姿を消して一秒も経たないうちに次々と
頭領を除く山賊達の胸や首筋から鮮血が吹き出た。
そして大量の返り血を浴び、フードが外れた状態で少年は剣を構えていた。
「上等じゃねぇか…!」
頭領は更に背中から無骨な斧を取り出した。
少年は古びた剣を尚も構え続ける。
「うおらぁ!」
二つの斧を同時に少年に向けて降り下ろす!
相当な速度だったが、それを右に避ける。
「やるじゃねぇか…」
「それはどうも」
少年は余裕顔を見せた。
「なら俺も本気を出し……」
頭領のセリフの途中で二つの斧の攻撃部分が取れた。
そして、頭領の首筋から大量の鮮血が吹き出した。
「もういいよ。ハーピィ」
少年がそう呟くと、背中の羽が光を放ちながら消えていった。
「またマントが汚れちゃったよ」
少年はマントを脱ぎ捨てた。
「最近の山賊は口ほどにもないなぁ」
そう言い捨て、少年は去っていった。