複雑・ファジー小説
- Re: ボクと誓約の翼 {感想お願いします} ( No.16 )
- 日時: 2011/12/04 22:21
- 名前: 元吉 ◆8OHUrY3.ic (ID: MRwb6zkQ)
朱色の翼、灰色の髪の少年と
漆黒の翼、帽子を深くかぶった男が睨み合う。
「やはりお前……誓約者だったか…」
「気付いてやがったか」
まぁそりゃあ誓約者じゃなかったらあの出血量で生きられるわけないもんな。
「それで、翼生やして俺にどう勝つつもりだ?」
男が下劣な笑みを浮かべる。
顔が寡黙そうなだけあって不自然だ。
「今、思い付く策を全て試してみる…」
「やってみろよ……おい!」
俺は店を出る。
男も遅れて飛び出した……ところで俺が瞬時に男の首を掴み、そのまま空高く飛翔する。
「まさかと思うが鳥が飛べる高度からの落下で石が砕け…」
男の言いたい事が言い終わるよりも先にいい場所に着いたので、思いきり地面に叩きつけた!
叩きつけた先は町外れの森の中。
少し大きめの川とその河原と木々以外は何もないはずだ。
今は砂煙しか見えないが。
俺は羽ばたくのを止め、そのまま垂直落下を始める。
剣を下に構えて、男の胸を的確に狙いながら。
「なめた真似してくれるじゃねぇか…」
途中声が聞こえたが、向こうはまだ気付いてないらしい。
「くらえ!」
一瞬だけ男が目を見開いたのが見えたが、それもまた風圧による砂煙で見えなくなった。
明らかに手応えはあった。
もしかしたら貫通したかもしれない……
俺は男に突き刺さった、剣を引き抜く。
だが、引き抜く時の手応えはまるで無かった。
首を傾げ、視線を剣の先へと移す。
理由はすぐにわかった。
剣の刀身が消えていたのだ。
砂煙がようやく消え、粉々になった刀身が姿を現す。
そして、その下には……
「終わりだな」
またしても下劣な笑みを浮かべた男が目の前に。
武器をなくした……
どうするべきなんだ……
「いつまで俺の上に乗ってやがる!」
男が俺を殴り飛ばした!
いくつかの木に体をぶつけ、やっと止まった。
雑念が多くて反応できなかった……
「………うぅ…」
体を起こすだけなのに呻き声をあげてしまう。
もう目の前には漆黒の翼の男がいる。
「今度こそ終わりだな…」
「……いや……まだだ………」
「往生際が悪ぃんだよ!」
男の拳を迅速戦法でかわす。
俺の後ろにあった大木が倒れてきた。
俺にはまだ策がある……
今思い付くなかでは最後だが…
しかもこれは失敗する可能性はかなり高い!
だが、悩んでいる暇はない……!
俺は川の方へ駆け出す!
「逃がすかぁ!」
男も追ってくる。
いや、追ってくれなきゃ困るんだ。
すぐに、川が見えた。
深さはそこまでない。
俺の腰くらいか。
川の直前で止まる。
男はまだ追ってきている。
そして、男が俺の真後ろに立った瞬間……
「……おゎ!」
迅速戦法を使い、足払いをかける。
男は無論、川に落ちた。
だが、まだ終わっていない!
「貴様ぁ! ふざけた真似を!」
男が血相を変えた。
だが、そんなものに気を配る余裕はない。
「凍えろ! フロスドライブ!」
俺の叫びと共に大きめだった川から音が消えた。
俺が全て凍らせたのだ。
男は顔と右腕が出ているという状態だ。
「これで俺を倒したつもりか?」
いい加減自分の笑みは下劣だと気付いてほしい。
「そのつもりだ」
「そうか。ならそいつぁ間違いだ!」
すると、男の周りに魔方陣が現れる!
魔法を使う気か?
「放て! クラッドフレア!」
今度は男の叫びが広がる。
その叫びと同時に男は炎を纏い、氷と化した川をみるみるうちに溶かす。
ここからでもこの暑さ。
これは相当な温度だ。
「残念だったな」
またしても下劣な笑み。
だが、その笑みを俺の笑みで返す。
「まさか一か八かのこの策が成功するなんてな」
「何!?」
「熱した石を急激に冷却させたらどうなるかわかるか?」
男は何も言わない。
「わかんないのか。なら死ぬ間際に知恵が増えるな」
俺の周りに魔方陣が現れる。
「安らかにな。フロスドライブ」
穏やかな口調で言い放つ。
急激に冷却された男は真っ二つに割れていった。
だが、ここからが対誓約者戦のみの特別な出来事。
ガーゴイルの男は真っ二つになった後、いくつかの光の玉になり、そのうちの一つが天に昇り、他はまた一つになり、普通の人間の男が現れる。
だが、それも束の間。
その人間に戻った男もすぐに何処かへ消えていく。
誓約者は二つの命を持つと言われる。
誓約者の死は、その宿る想獣の死となり、想獣の力は消え、誓約者自身も世界の何処かへランダムに飛ばされるのだ。
「名前くらいは聞いておくべきだったかな」
ボクは一人で呟く。
だが、ここで意識が途絶える。
最後にボクはこんなことを考えてた。
戦闘中に自分の下劣な笑みなんて見えるはずなかったなぁ
と。