複雑・ファジー小説

Re: ボクと誓約の翼 ( No.2 )
日時: 2011/12/06 21:24
名前: 元吉 ◆8OHUrY3.ic (ID: MRwb6zkQ)





─────アデウス地方 モーガングの港にて


「宿。一泊」
そう二言だけ告げながらカウンターに金を置いて、宿屋の二階に向かった。


外はもう真っ暗だった。



ボクはあれから、砂地を抜け、小さな森林を歩いてやっとモーガングの港に辿り着いていた。


……正直、山賊の相手してあげるのより歩く方が疲れた。


ふぅ。と息を吐き、ボクは部屋の隅にある質素なベッドに寝転んだ。

すると、ドアに二回のノック。
続いて
「ディア・フリージア様。夕食でございます」
という声が聞こえた。


「入っていいよ」
ボクは上体を起こした。


「失礼します」
と言いながら、黒いタキシードを着た老人が、部屋に入ってきた。

やはり、この宿屋の汚さと老人の格好が釣り合わない。


過去にも二、三度、ここを利用したことがあり、格安で朝食夕食付きということでお気に入りだ。


老人は部屋の中央にある焦げ茶色のテーブルに夕食を置いて、
「召し上がられましたら皿は廊下へお出し下さい」
とボクにとってお馴染みになってしまったセリフを残して去ってしまった。




パンにサラダにスープか。

いたって普通の食事。
いや、むしろ質素か?
まぁこの際文句なんて言わないけど。


ボクは夕食をあっという間にたいらげて、
皿を廊下に出してそのままベッドに横たわった。



結局、今日も収穫は無しか。


今晩も明日についてハーピィと相談しよう。


気付けばボクの意識は夢の中にあった。




「今日はどうだったの? ディア。」

夢の中でのみ会うことが出来るボクと誓約を交わした想獣。

目の前にいる翼人族の少女がその想獣“ハーピィ”だ。


「ダメだ。まるで手掛かりがない」
ボクは肩を落とす仕草と一緒に言った。


「アレ以来丸っきりね。 このままじゃ奴等を殲滅出来ないじゃない」

可憐な見た目とは裏腹に言うことは怖い。


「いや、頑張ってはいるんだけどね……それが…」

「まぁいいわ。 気長に行きましょ」
そう言って笑みを見せたハーピィを最後に夢の中の意識が途絶えた。




あっという間に夜が終わる。

そしてまた、ボクの朝が始まる。