複雑・ファジー小説
- Re: ボクと誓約の翼 ( No.22 )
- 日時: 2011/12/06 21:26
- 名前: 元吉 ◆8OHUrY3.ic (ID: MRwb6zkQ)
「チェックアウトで」
その一言と金を受付に残し、宿屋を去る。
北かぁ……
大分長くかかりそうだ。
そんなことを考えながらモーガングを出る。
しばらくは何もなく平和に歩き続けた。
朝から歩き続け、やがて日が暮れそうになる。
今日だけで山を三つ越えた。
そろそろ休もうとモーガングで買った大きめなリュックを降ろす。
まず、ライターをリュックの中から出し、近くにあった乾いた小枝と枯葉を集めて火を付ける。
次に、毛布を取り出し、くるまった。
北に近づいているからか、モーガングなんかよりもうんと寒い。
でもまぁ今は暖かい……
いいや、まだ早いけど寝よう。
まぁ長く寝る事で利点があると知った上だけど。
体力の回復とかそういうのは除く話だけどね。
「あとどれくらいしたら目的地なの?」
「んー…あの妖力を見失ったわ」
「はぁ!?」
「でも、北にはまだいるはず。だから引き続き北へ向かって?」
「へーいへい」
「明日の昼頃には吹雪と遭遇するわ」
「………たまには南へとバカンスもいいよね」
「困るわ」
「いや、そんなに本格的に悲しそうな顔しなくても」
「もし、南へ向かったら……」
「いや、冗談だからね!?」
「わかってるわ。明日は吹雪に遭遇したらアタシの名前を呼んで」
「ハーピィを? 翼人族って確か吹雪が苦手だった気が……」
「ディアばかりに辛い思いさせるわけにはいかないわ」
「ありがとう。んで、どうするつもりなの?」
「翼で雪を防ぐだけよ」
「なんか…ハーピィに手間がほとんどない気がするけど」
「翼に雪が付くわ」
「なんか…いい人だと思ったのに…」
「あ、で昨日の続きは…」
「何の事?」
「とぼけな…………」
小鳥のさえずりが聞こえる。
初めて聞く声だけど。
またタイミングのいいところで夢が終わる。
ボクの体が都合良く作られてることに感謝だ。
火はとっくに消えてる。
辺りは小鳥のさえずりだけが響き渡る。
毛布をしまって、またボクは歩き出す。
だんだん足元に雪が目立つようになってきた。
こっからが悪天候になりそうだ。
そっから更に歩いていくとついに吹雪と遭遇する。
突然って感じだった。
「くそっ……前が見えない」
白、白、白だけ。
白以外何も見えない。
なら言われた通りに…
「た……頼むぞ…ハーピィ…」
視界に朱色の翼が入ってきた。
あまり状態が変わらない……
まずい……寒さで体が動かなくなってくる……
どうするべ……き…だ………
ボクの意識があったのはここまでだった。