複雑・ファジー小説

Re: ボクと誓約の翼 ( No.26 )
日時: 2011/12/08 22:30
名前: 元吉 ◆8OHUrY3.ic (ID: MRwb6zkQ)




そう。
これはわずか1か月前のオレの話。

つい最近の出来事だけれども正直信じられないオレがどこかにいるんだ……。




「セーアー早くしろよー」


普通な朝、普通な呼び声。

何の変哲もない朝と何の変哲もない呼び声。


「待ってよ。クレア」


オレの着替えをクレアが急かす。


近所の中学校に通うオレとクレアはこの日、一緒に寄り道するために早めに家を出ようとしていた。



「お待たせ!」
階段を駆け降り、急いで靴を履いて外から声をかけていたクレアと合流する。


「じゃあ行くぞ」


寄り道とは言っても普通に通学路外れのコンビニへ行くだけだけどね。
………まぁホントは校則違反だけどね。



そして……


「「えー! 明日!?」」

「ライゾンクエストⅨの発売日は明日だよ? きちんと確認したのかい?」

店員は困り顔をしていた。

ライゾンクエストⅨは11日発売だったのか……どっかで狂って10日と覚えていた。


「………セーア?」

これは殺気!?


「ゴメン! クレア」

コンビニの手動ドアを思い切り押して逃走開始。


「この最高潮に高まった気持ちを返せぇぇぇ!」


クレアはなんだかんだめちゃくちゃ足が速い!
1年生にして陸上部ではリレーメンバーに選ばれてるとか。

でも、オレだって負けてないぞ!
……ほぼ互角くらいだけど。
「ま、待てよクレア」


とりあえず殺気を消してもらわないと……


「………ん?」
気にかかるものを見つけて足を止める。

「お前! ………ん?」

クレアもオレと同じリアクションを取りながら足を止める。


ここはコンビニから少し離れた広大な河原の鉄橋の下。


その柱のような部分にオレがしゃがんで入れるくらいの穴があった。

もちろん今まで一度も見たことない。



すると、生暖かい風が身体中を駆け抜け……





………穴がオレ達を物凄い力で吸い始めた。



「ぐっ……何だコレは…」

クレアが引きずられているのが目に映る。
クレアの靴の後ろの地面が線状にえぐられている。


このままじゃクレアが……!

でもオレだって……


オレだって余裕はない。
むしろ助けてもらいたいくらいだ。

でもクレアは穴のすぐそこまで引き込まれている。


こうなったら……!


「クレア!」

クレアに近づき、思い切り蹴り跳ばし、穴の吸い込みが届かない場所へ避難させる。



これでクレアは救われた。

でも……



「セーア!」


オレの意識はクレアの声を最後に光と共に途絶えていった。






「…………」




ここはどこだ?

目に映るのは晴れ空。


だが、周りには雪が積もっていた。



上体を起こすと、オレの家と同じくらいの大きさの建物があった。


そこに住んでいたのが博士だったんだ。


博士はオレを救ってくれた恩人。


この恩はいつか返したい。


そして、元の世界へ帰りついてやるんだ。



……必ずな。