複雑・ファジー小説

Re: dis 3011 ( No.3 )
日時: 2012/02/23 15:25
名前: 秋原かざや ◆FqvuKYl6F6 (ID: 76WtbC5A)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode

◆ヒールの靴音

「ねえ、あの子……ウチの学園の子じゃないみたい」
「転入生かな?」
 制服を着る学生達がざわめき始める。

 そんな声なんて気にせず、手元を見る。
「どうして、あの人が知っているのかは知らないけれど……」
 あの人から渡されたメモには、このアカデミー東京校の場所が記されていた。
 ご丁寧にアカデミーの入り方もレクチャーしてくれている。
 だからこそ、こんなにもすんなりと、校内を歩いていられる。

 ここは、アカデミーの校内。
 昼下がりの廊下を黒いワンピースの少女は、ずんずんと歩いていく。
 長い黒髪が歩くたびに、ゆらゆらと揺れる。
 大きな淡い桃色の瞳。それが何かを逃さぬよう、鋭い視線で先を見据えていた。
「私の目的は、果たさないと……」

 彼女もまだ、知らない。
 これから過酷な運命が、彼女を支配することを。

 彼女は進む。
 ヒールの音を鳴らして。
 その手のメモには、旬という名が丸で囲まれていた。