複雑・ファジー小説
- Re: dis 3011 ( No.4 )
- 日時: 2012/01/08 21:47
- 名前: 秋原かざや ◆FqvuKYl6F6 (ID: 76WtbC5A)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode
◆名も無き楽園
飛び込んでくるのは、輝かんばかりの緑。
そして、色とりどりの花達。
ガラス張りの温室の中には、人が楽しめるようにと、白いテーブルクロスの掛かったテーブルに、細かい細工が施された白い椅子が5脚置かれていた。
そんな、素敵な庭園で、二人の少女が楽しそうにティータイムを過ごしていた。
「ねえ、トゥーラ? カリス姉さまが、お疲れなんですって」
「ええ、シャーナ。だから後継を探しているって」
どうやら、その二人は双子のようだ。
お揃いのドレス、お揃いの帽子、お揃いのバッグ。
けれど違うのは、その色。
一人は鮮やかな赤。
もう一人は、艶やかな黒。
楽しそうに笑いながら、ひと時のお喋りを楽しんでいる。
「でも、カリス姉さまの後継ってだあれ?」
「姉さま以上のヒトっていたかしら?」
ねえと、声を合わせて、同じ紅茶を飲み干した。
「姉さまも限界よね……」
「ずっとわたしたちを見ながら、あんなにたくさん働いているんだもの」
「他のヒトたちにも、姉さまの爪の垢を飲ませたいくらい」
「そうそう、それくらい働いてみなさいってものよね」
くすくす笑いながら、同時に同じ、クッキーを口に入れた。
ぱりぱりと美味しそうに頬張って。
「かといって、わたしたちじゃ、姉さまの足元にも及ばない」
「仕方ないわよ、わたしたちはそういう立場には、絶対になれないもの」
二人は同時に、紅茶にミルクを入れた。
同じように紅茶に白い円が出来上がる。それを二人は満足げに眺めていた。
「早く姉さまの後継が生まれるといいわね」
「ええ、そしたら、姉さまの代わりに一緒に遊んでもらわなくっちゃ」
にこっと微笑みあって。
「「楽しみねっ♪」」
二人の笑いが庭園に響き渡る。
ふと、二人は同時に空を見上げた。
ガラス越しに見える、どこまでも澄んだ青い空を。
「あらやだ」
「姉さまのところにお客様っ」
「わたしたちもお迎えしなくっちゃ」
「遅れたら姉さまに叱られるわ」
ばたばたと慌しく、庭園の外へ向かう。と、一人が振り返った。
「やだ。鞄忘れちゃった」