複雑・ファジー小説

Re: コード×コード 第一章【 壊しにいく 】更新開始 ( No.7 )
日時: 2011/11/18 07:40
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: FQzo10Uq)

『アナウンスを続ける。先程呼ばれた二人、並びに開発コードA-NN1012、システムコードTNP-QL555。以上四名は直ちに本部長室へと来るように』

 ぷつっと回線が音を立てて切れる。その音で金縛りが解けたかのように社員たちは尊とアレックスを探しながらも自分の職場へと戻っていく。放送終了時から社員たちがざわついているのは、尊やアレックス、それに今まで名前さえ知らなかったような【コード】まで呼ばれたからであろう。
 あと、考えられる別の理由が一つ。S班に所属している海棠尊はS班内部でも群を抜いて通信技術能力が高いことで有名であり、アレックスもKS班の中では一番といっても過言ではないほど、多くの任務を完遂してきた。この業界のスペシャリストに近い人物だ。ただ、二人が通信を行うっているのは異なるコード。システムコードが尊の専門分野、開発コードがアレックスの専門分野なのである。その二つのコードのスペシャリストが呼ばれたといっても間違いではないのである。
 
「アレックス」

 尊は、空になったコーヒーカップを見つめながら隣に座る同職者の名を呼ぶ。それは、放送で呼ばれて嬉しいなど喜びの表現を感じる声色ではなかった。酷く落ち着いていて、何かを深く考えているようだった。

「俺達以外に、開発コードとシステムコードを呼ぶとは……。しかも俺、あのコード初めて聞いたんだよねー。
 特殊任務だったらどうしよっか」

 アレックスは、ははっと力なく笑う。尊は【特殊任務】という単語を強く考えていた。今まで、特殊任務が行われた事例はない。ただ、アナウンスで呼ばれた逸材たちが帰ってこないという事実。それが開発コードでも、システムコードでも、S班でも、KS班でも、帰ってこないのである。もし、なんらかの理由により生存できていないとなると、自分たちも危ないのではないか? もし、もし……。
 その事ばかり考えていた尊たちの前が少し暗くなったのに、下を向いていた尊は気づいた。アレックスは、その影を作り出している者達を見ている。

「開発コードA-NN1012と言う。俺のパートナーは……アレックス=ターナーで間違いはないだろうか?」

「システムコードTNP-QL555。僕の相棒となるのは海棠尊さん、ですよね? 宜しくお願いします」