PR
複雑・ファジー小説
- Re: タイトル一時無題とします 第一章【 壊しにいく 】更新開始 ( No.15 )
- 日時: 2011/12/12 21:28
- 名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: FQzo10Uq)
生物たちが、監視プログラムを使用し会社内の別区間を覗いている間中、四人は箱の扉をどうにかして開けようと試行錯誤していた。エレベーター自体は目的の最上階に着いていると、尊から言われたため先程からアレックスが驟雨と鈴に扉を開けてもらおうとしている。だが、それが中々上手くいかない。扉に指を引っ掛けようにも、そんな僅かな隙間さえも存在しない。そのため、扉を開けるという作業は無謀に近いものだった。
扉を開けるのなら、壊せばいいと驟雨からの意見もあったがアレックスはそれを却下した。エレベーターも扉は如何なる衝撃が加わっても壊れないよう工夫されているらしいのである。ただ、何が使われているのかなど、一会社員が知っているはずがないため、拒否を選択したアレックスは詳しい内容を伝えることが出来ないでいた。
「アレックス。扉なんか放って置いて良い」
不意に、尊がパソコンを折りたたみ立ち上がる。
顔には疲れが見え、少し汗がにじんでいた。
「……なんか、終わったのか?」
「システムを書き直して遊んでみた。てへぺろー」
真顔で、しかも言葉に特に大きな抑揚すら持たせずに言ったため微塵も可愛げが存在しなかった。尊の「てへぺろ」に存在していたのは、気持ち悪さと呆れだけだった。
「ま、とりあえず塗り替えたデータが認証されるまで少し時間あるから俺は寝るから。んじゃ」
「あ、あぁ。おやすみ」
尊は、おうっ、と言うと力尽きたゲームキャラのようにぐったりとした様子で横になった。アレックスは疲れてもう寝てしまったのだろうと考え、鈴と驟雨に静かにするよう促し静かな環境を作った。
横になり壁を見つめている尊は、アレックスの気遣いに苦笑を漏らした。そして音を立てずに瞼を閉じると静寂の夢の世界へと連れて行かれてしまった。
PR