複雑・ファジー小説

Far:4 1/2 ( No.14 )
日時: 2011/12/03 00:35
名前: うにょ (ID: qpE3t3oj)


「……」先生は何も言わない。どうして?そんなに大切なことなの?






そんなに黙られても、困る。





だって、気になる———。







「…ね、ぇ。せん…——」




           「先輩」






「…勇人」













——…誰?先生で隠れてて見えない。





凄く低くて、心地良い低音ボイス。







「松宮先輩が呼んでますよ」



「今行く」

Far:4 2/2 ( No.15 )
日時: 2011/12/03 09:44
名前: うにょ (ID: qpE3t3oj)



ガラッ、と部屋のドアが閉まる。



焦ったように慌ただしく出て行った先生の背中を、私は止めるすべを持ち合わせていなかった。






「………」



しばらく、先生の出て行ったドアを見つめていた。



ただじっ、と。







そして、突然「…お前、先輩が担当してる患者か?」と誰かが言った。





———すっかり忘れてた。



さっき先生に隠れていて見えなかった彼の存在を。




……『お前』って私のこと?




ゆっくりと視線を声の主に向ける。






「…“先輩”って、…先生のことですか?」



「ああ。その様子じゃ、そうみたいだな」








あ、今度は見えた。



もう、彼と私を隔てるものなど何もない。







「………っ」









なんだろう。



この気持ちは。




胸が、疼くような感覚。










長身で、程よく筋肉の付いた身体。少し顔を出す鎖骨がなんとも厭らしい。



凛とした、しっかりとした意思を持った強い瞳。









「「………」」



















まずい。







どうやら不覚にも私は、






       一目惚れをしたらしい。