複雑・ファジー小説

Far:5 ( No.16 )
日時: 2011/12/03 16:03
名前: うにょ (ID: qpE3t3oj)



ドクン、と胸が大きく高鳴るのを感じる。



こんな感覚初めてだ。





「…名前、何て言うんですか?——私は、」



「伊崎 己織いざき・みおり、だろ?」





なんで知ってるの?






「外のプレート見た」



「…あ、なるほど」





…そういうことか。


ていうか、読まれた?





「俺は由代 勇人ゆいしろ・はやと。この大学の経済学部2年」



「えっ、ここの生徒?……2年、ってことは、私と同い年なんですか?」



「ああ。……、それ嫌なんだけど」



「へ?」






彼、由代くんが私を睨む。



(『それ』?)








「敬語、同い年なんだからやめろ」



「えっ?あ、敬語……はい。すみま…、ごめん」



「別に」











やばいかもしれない。





緊張しすぎて、上手く話せているか分からない。



…どうしよう。不信感持たせちゃったかな。






自然と俯く私。













「何て呼べばいい?」



「…え」



「お前のこと」










いきなりのことに驚いて、慌てて顔を上げれば優しい表情の彼。



先程までの冷たそうな見た目は一変していた。









「……己織で、」






「己織」










その声に私は、


はっとする。












「俺のことは、勇人でいいから」



「……勇人、くん」



「勇人“くん”?」



「…勇人」




観念した私がそう言えば、彼はふっ、と目を細めて笑う。










彼の声が、表情が、とても柔らかく感じた。