複雑・ファジー小説

Bad:3 1/2 ( No.20 )
日時: 2011/12/06 17:11
名前: うにょ (ID: qpE3t3oj)



「…ぁ、そうだ!」



ポンッ、と閃いたナイスなアイデア。



……プール!!














         —————————————








「…うん、静かだ」



こんなに落ち着いて過ごせる場所ってなかなかないと思う。





今は秋。夏は日差しに反射してきらきらと輝いていた水も、この季節。


一滴もない。






「ふぁあ〜…」


ぽかぽか陽気の今日。日向ぼっこにはもってこいだ。



傍らに読みかけの本を置き、プールサイドに寝転がった。




(…おやすみなさい)







段々と黒に染まっていく視界。シャットアウト。




……と思いきや。










「こんにちは」




「…ん?」








誰?と尋ねようと閉じかけた目蓋を開ける、と…


「…あ。さっきの」



「覚えてくれてたんだ」







(え、バレてたの!?)












そこにいたのは、先程私が目撃してしまったラブシーンの男。



あんなところを人に見られたにも関わらず、平然としているこの男にとてつもなく驚いた。

Bad:3 2/2 ( No.21 )
日時: 2011/12/06 17:33
名前: うにょ (ID: qpE3t3oj)



「いやー、あれには本当ビビったね。まさか誰かに見られるなんて思ってもみなかったから」


「……」


いや。普通、あんな所は誰かしら来るに決まってるだろう。




そんな私を見て、彼は首を傾げた。


「…ん?もしかして、知らなかったりするわけ?」


「…何が?」


私を覗き込むようにして膝を突く彼。




「あそこ、俺のラブルームなんだけど。これ、この学校じゃ常識」


「…何それ。なんか悪趣味」


「ははっ。酷い言いようだな〜」




(“ラブルーム”ってことは、あの教室はこの人がああいうのをする為の場所ってこと?…しかも、常識って)




「そんなの、知らない」


「うそつけ」


「いや。至って大真面目ですよ」


「まじか」



目を丸くして、ひょぇ〜っ、とわざとらしく奇声を上げる彼。



今更かなりのイケメンだったことに気付く。




「君さ、友達いなかったり…」


      「するわけないでしょ変態」




「…へんた、…ぶぷっ」





友達くらいいますよ。当然。


ちなみにクラスじゃ人気者ですよ。えぇ。




でも、いっつも常日頃から人気者を演じるって疲れるじゃないですか。





「…まあ、そうだよな。俺、君のこと知ってるし」


「え?」




こいつ今、何言ったよ。








「“天童 美玲”。天童財閥の会長の孫、だろ?」


「…よくご存知で」




何故知っている。





「君、かなり有名だよ。美人で明るくて、しかもお金持ち。ついでに成績優秀。…男子からすれば憧れで神的存在、近寄りがたい。女子からすればもういい子いい子、一緒にいて楽しい。——男子から近寄りがたいって思われてる、ちょっと残念な子だね。…まあ、俺は残念な子じゃないし、俺の方が断然有名なんだけど」



「…良かったですね」





自慢かよ、おい。







「でもさ、なんか話してみると全然明るくないし。むしろ暗い感じ?」


「…皆の前では演じてるだけですから。疲れるんですよ、ああいうの」



「なるほど。俺も人のこと言えた義理じゃないしね。…皆の前じゃもっといい子ちゃんだし?」


「…自信過剰ってやつですか」


「なワケないでしょ」