複雑・ファジー小説
- Far:6 ( No.24 )
- 日時: 2011/12/07 18:44
- 名前: うにょ (ID: qpE3t3oj)
あれから数分。
すっかり…とはいえないが、打ち解けた私達は会話の花を咲かせていた。
「勇人は、今日は何の用でここに?…もしかして研修?———いや、でもまだ2年生なんだよね…?じゃあ、どうして?」
「…今日は講義が午前で早めに終わったから、先輩、…お前の担当医と会ってたんだよ。そしたら、急に松宮先輩から連絡で。緊急事態だとかなんとか。……それでついてきて、今に至る」
「そうだったんだ。…ごめんね、私のせいで。先生と話したいこと沢山あったでしょ?」
ああ、本当にこの上なく申し訳ない。
私がこんな病気なせいで、勇人と先生の時間を奪ってしまった。
「…いや。そうでもない。ちょっと気まずくなってるときだったから。逆に助かった」
「え?気まずくなってたの?」
「…ああ。まあ、色々とあったんだよ」
「へぇ…」
なんか深入りしない方が良さそう。
そう思っていると、勇人が前触れも無く話を切り出した。
「…それにしたって、己織」
「っ…、な、何?」
突然呼ばれた名前に、思わずびっくりしてしまった。
なんだか、嬉しいような…なんというか。
「ここ、いつから入ってるんだ?」
「…へ?」
(“ここ”?)
呆然とする私とは逆で、彼の瞳には真剣な色が映っていた。
「…ここ、って。この個室のこと?」
「ああ」
「んー、いつだったかなぁ?」
必死で記憶を手繰り寄せる。
求める記憶は一つのみ。
首を傾げながらも、曖昧な断片が一つ。
「ああ、そうだ。えっと、 からだったと思うよ」
「…え?」
今度は彼が呆然とする番。
私を見た状態のまま、固まってしまった。
「…おーい?どうしたの、勇人?」
彼の顔の前で手を上下に振る、と彼がその手を掴んだ。
「…それ、嘘じゃないのか?」
「嘘なわけないじゃん」
「…………」
どうして?
どうして、そんなに深刻そうな顔をするの。
……彼の表情が悲しげに見えた。