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複雑・ファジー小説
- Far:8 1/2 ( No.27 )
- 日時: 2011/12/12 02:43
- 名前: うにょ (ID: qpE3t3oj)
———そんなこんなで、私と勇人が再び会話の花を咲かせること20分。
「入るよー」
「…あっ、どうぞ」
ガラッ、とドアがスライドして入ってきたのは先生。
「お、いたな。勇人」
「?何かありましたか、先輩」
勇人は何故先生が自分を捜していたのかが分からないようで、少し首を傾げた。
(…やばい。可愛い…っ)
「丁度ここ(病院)のカルテ、教授が見にきてたんだ。最近なかなか忙しくて大学の方に顔出せなかったから、お前に会いたいって」
「…ああ、田原教授ですか。今行きますよ。——じゃあな。己織」
「……えっ、あ、うん。またね」
よっこらせ、と言いながら立ち上がって部屋を出て行く勇人。
…私は、勇人が「己織」と私を呼んだことに敏感に反応して眉を顰めた先生に気付かなかった。
- Far:8 2/2 ( No.28 )
- 日時: 2011/12/12 02:53
- 名前: うにょ (ID: qpE3t3oj)
「…勇人は、伊崎さんのことを『己織』って呼ぶんだね。知り合いだったのかな?」
「…え?」
あれから少しの間のあと、突然先生が意味深な質問をしてきた。
「ううん。今日初めて会ったよ?そしたら、仲良くなっただけ」
「……そっか。じゃあ、伊崎さんも彼を呼び捨てで呼ぶの?」
「うん。勇人がそう呼んで、って言ったから。最初はくん付けだったんだけど」
先生が眉を顰めた。今度は気付いた。
でも、それが「勇人」に反応してのことだということには気付けなかった。
「そういえば、先生って松宮先生と仲良いよね」
「…、…はい?」
先生の目が一瞬にして点になる。
「だって、先生は松宮先生のこと『薫』って呼んでるし、松宮先生だって先生のこと『竜巳』って呼んでるじゃん」
「それは…うーん、……仲がいいわけではないかな」
「…どういうこと?」
「——…そこは、まあ、黙秘権?ってヤツ」
「ズルーイ」
「ははっ。なんとでも言え!」
くすくす、と互いの笑い声が室内に響き渡った。
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