複雑・ファジー小説
- Bad:6 1/3 ( No.31 )
- 日時: 2011/12/16 19:41
- 名前: うにょ (ID: qpE3t3oj)
「…じ、時間がない?」
「ええ、そうですよ?…なんてったって、今日は——」
「美玲ーーーーーー!!!!!!!!!!!」
晴山の言葉を遮るように、誰かが私を大声で呼んだ。
「…来るわね」
「ええ。ざっと計算して残り3秒です」
2
1
バンッッ
勢いよく部屋の扉が開いた。
「うふふーっ、美・玲・ちゃ〜んっ」
「…出た」
「出ましたね」
この目の前の上機嫌な口調の主は、私の母である天童 朱莉だった。
相変わらず、その豪快な口調に負けず劣らず化粧が濃い。
…ベタベタだ。
- Bad:6 2/3 ( No.32 )
- 日時: 2011/12/16 20:05
- 名前: うにょ (ID: qpE3t3oj)
「今日ほど待ち遠しかった日はないのよ〜?——あの人と私の結婚式の日よりも、ずっと楽しみだったのよ〜!!!」
…自分の結婚よりも待ち遠しかった日とは、一体…
「今日、何かあるんですか?お母さん」
「あら、言ってなかったかしら???…やだ。私ったら…年かしら」
「奥様。奥様が今日の事、本人には秘密にしておこうと言ったのではなかったのでは?」
「…ああ、そうだったわね!サプライズよ!サプライズっ!!」
二人で勝手に話を進めないでほしい。
「…とにかく!さっさとドレスアップなさい!早く行かなきゃ遅刻よ、遅刻!
先方に申し訳が立たないわ!!!」
「…先方?」
これから起こるべきであろうことを知らされないまま着替えさせられ、無理矢理車に乗せられた。
- Bad:6 3/3 ( No.33 )
- 日時: 2011/12/16 20:36
- 名前: うにょ (ID: qpE3t3oj)
———そして今に至る。
「そんなこと、聞いてない」
「当然よ!私があなたを身篭ったと分かったときから決まっていて、私はそれを今日までずっと秘密にしてたんだから!!」
「…なんで秘密にしてたの」
「だって、じゃなかったらあなた、絶対認めなかったでしょ??」
「そりゃ、そうで——」
「それじゃ困るんだよ」
と、ここで変態男…否、時政 静冶が口を開いた。
「どうして?」
「………」
理由を答えてくれないのは、何故なのだろう。
「ま、まあ、いいじゃないですかっ!…とにかく、お見合いという名ばかりの顔合わせも済んだことですしっ、取り敢えずここは若い二人だけにして、私達大人は移動しましょうよ」
そこで口を挟んだのは、時政母。時政 瑞菜だった。
「そうねっ!どこに行きましょうかしらね?」
と母。
「遠出でもしないか?夜までに帰れば問題ないだろう?」
それに続いて言ったのは、時政父。時政 雅史。
ダンディな色気ムンムンの男性だ。
「そうだな。なら、運転手にとばしてもらって、他県の美味い店でも行くか」
更に父、天童 幸樹。
身長が低く童顔なため、実年齢よりも一回り以上も若く見える。
「それじゃっ、ごゆっくり〜」
バタン、とドアが閉まる音が空しく響いた。