複雑・ファジー小説
- 第8章 やるきの差と秘密 ( No.51 )
- 日時: 2012/06/02 23:10
- 名前: 緋賀アリス (ID: 35AN48Qe)
「全員構えて!」
翔子の掛け声で全員が武器を構える。……が……
「スィススィスイ!」
「えぇ?」
何と掛かってくるどころかその場で振り向いては逃げていくではないか。
「と、とにかく追いましょう。『スカイマーチ』!」
翔子が軽快な曲を奏でながら薫風に包まれ飛びあがる。続いて優も服の後ろの大きな蝶結びにしたリボンを羽の様にして後に続いて行く。……梓もだけど、皆飛べていいなぁ。
「蒼乃も自転車で追うですぅ!」
「あ、うん!」
三人(?)共もう随分先まで行ってしまっている。追い着かないと。まだその速さに慣れない自転車で三人を追いかけてすぐに追い付く。
「スィィスィ!」
魔女は脚についた車輪で道路を走っていく。当然結界も移動するのだから道行く人は一人残らず硬直している。曲がり角が来てもきちんと曲がりこちらに向かってくる気配もない。
「一旦どこに向かってるのかしら……」
「さっきから通ってる道アタシの通学路とぴったり同じですけど、もしかしたら学園ですかねぇ?」
「また学園!?」
「でも確かに学園に近づいてるわね……というか学園の裏口までもうすぐじゃない。」
魔女を追いながら住宅街を抜けると我が翁梶学園の裏口が見えたがあいにく裏門の鍵は閉まっている。
「正門まで回るみたいですね。」
「……皆待ってちょうだい!」
てっきり正門まで回るのかと魔女は思いきや学園の塀を越え校舎の壁を走って登り始めた。
「続くですぅ!」
「おぅうぅぇい!?」
相変わらず驚いてすさまじい声を出してしまったが魔女と同じ様に校舎の壁を登る。魔女が屋上に躍り出るとその場で楽しげに一回転するとまた屋上を走りだしあろうことか転落防止用の柵もろとも飛び越えたではないか。
「ま、マチルダ…まさk((((;゜Д゜)))
「突撃ですぅ!」
\(^-^)/
もう諦めた…どうにでもなれ。さっきまで我慢しつつ少ししかかけていなかったブレーキを離し、全速力で走る自転車に気を失いそうになるのを堪えて柵の前で後ろに思い切り体重をかけて空に放り出される感覚がすると自転車が地に着いていなかった、っていうか現在進行形で絶賛落下中。因みに学園で一番高い6階建ての部室が沢山入っている通称部活棟から飛び越えたから見晴らしいよ、満月を突っ切る自分の自転車……どっかで見た気が……あ、いや、最悪、もうダメ、怖い、下を見ると普通に飛んできた小鳥遊先輩と優が自分を見上げている。
「E〇みたいね。」
「綺麗ですねぇ。」
そういえば後ろにマチルダがいたな、怖くないんだろうか
「〇Tみたいですぅ↑↑」
「折角の伏せ字が!台無しじゃない!!」
「あ!気を失いそうになってて心配してたら大丈夫だったかですぅ。」
「さっきノリノリで楽しんでたじゃない!」
突っ込んでたら(健全な意)元気になっちゃった(これまた健全な意)大きな音を立てて自転車が着地したのでそのまま自転車を止めて下りた。着地した衝撃が腰に来たのか歩くと少し痛いがそれどころではない。
「沢城さん、希咲さん、行きますよ!」
今度こそとそれぞれ武器を構えると流石に逃げずにこちらに突進してきた。
「行きますよ、『グローラベリー』!」
優の足下から苺の蔦が溢れて魔女を捕らえようとするが蔦が絡み付く前に走り抜けていってしまう。そのまま魔女が車輪を弾丸の如く飛ばし走らせる。
「嘘ぉ、苺の蔦を走り抜けてよけるなんて……」
「これなら!、『アイシクルノヴァ』!」
縛れないならと、今度は私が氷の礫を打ち出すも車輪が魔法の邪魔をする。
「皆さん、一気に決めますよ、『ワールプレリュード』!」
翔子がバイオリンを弾くと辺りから魔女を中心に車輪を巻きこみながら竜巻が起きる。
「すごい……」
「風の魔法は空気の流れを操りますから広範囲に攻撃できるですぅ。」
「クレッシェンド!」
翔子のバイオリンの音色が大きくなりそして激しくなると同時に竜巻も大きくなり勢いを増す。
「スィィス!!」
風の力に押され車輪は巻き上がり何個かが竜巻の中を風に逆らって走っている魔女に当たる。これならいけそうだ。
「優!援護してトドメを刺しちゃおう……って優?」
優が不思議そうな顔であたりをきょろきょろしている。
「……沢城さん、何か変な音……っていうかバイオリンじゃない曲が聞こえませんか??」
「?確かに……さっきまで気がつかなかったけど…ピアノの音色?っていうか段々大きくなってきてる。」
辺りにピアノの音色が響いている。誰だろうか?自分と優は今ここにいるのだから違うし、翔子も今はバイオリンで作った竜巻で応戦しているので違う。とにかく暗い、寂しいピアノの音色が辺りに響く。
「なにこれ??ピアノの音色かしら……??」
翔子も気づいたようだ……が少し遅かった。横から何枚かの楽譜が飛んできて翔子の手足に絡みむように張り付き彼女の自由を奪ってしまう。
「な、何ですかこれ??」
「小鳥遊先輩!?」
バイオリンの音色が消えたため魔法が弱まり、竜巻から自転車の魔女が出てしまう。余程竜巻から出れたのが嬉しいのか走りながら小躍りしている。そしてその側にもう一つ人影が、真っ白なブラウスに黒いスカート…そう楽器の発表会に着ていくような服装をしていて、膝まで届きそうな長い髪で顔は見えないが……恐らく魔女だろう。
「よーし!ここはこの蒼乃様が魔女の名前を暴いt
「あれは『ピアノ』の魔女ですぅ!」
おいぃいぃいマチルダぁあぁあぁあ出番取るなよぁぃぉ!
「沢城さん、ふざけてる場合じゃありません、来ますよ!」
「くっ…!シ、『シールドカノン』!」
翔子の回りに風のドームが現れ突風で彼女に張り付いた楽譜を吹き飛ばしていく。
「リルリルゥゥん」
魔女が空中でピアノを引くような動作をすると指先が光り、光の軌跡を描く光弾が打ち出され、自転車の魔女からも車輪が飛んでくる。
優の茨の鞭と私の『フロストリボン』で応戦するも距離がありすぎて車輪や楽譜に魔女にまで攻撃が邪魔されて届かない。その上、二人の魔女の集中砲火もさ翔子のドームで防ぐには量が多すぎてドームに亀裂が入り今にも割れてしまいそうだ。
「小鳥遊さん!何かいい案はないんですか?」
優はもう攻撃はやめて鞭で車輪や楽譜を弾き、防御する事に専念している。
「先にチョロマカ動く自転車の魔女を倒したいんだけど、やっぱり近づかないとね……ただでさえ動けないのに私達って遠くから攻撃する魔法ばっかりでしょう?如月さんとか茉莉なら近づけそうだけど…」
確かに言えてる……何とか近づければ……ってあれ?そういえばマチルダは? さっきからいないし……
「……近づく……!アタシ閃きました!ちょっと小鳥遊さん耳貸してもらえますか?」
次回!!優が考えた衝撃の打開策とは!!
続く(続きませn(続くよ!!!