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複雑・ファジー小説
- Re: ▽attention、 —この先、危険区域— ( No.2 )
- 日時: 2011/12/10 16:55
- 名前: 唯津* (ID: Hf5/.9Rn)
□ぷろろーぐ、
——それは突然だった。
なにかの肉が切れる音がした瞬間、何かの液体が自分の体に降りかかってきた。
その液体は鉄くさくて赤くて。
よく切り傷をつくったりすると、自然と出てくる“アレ”に似ていた。
だが、今は切り傷所の量じゃない。たくさんの“アレ”が視界を遮るようにボタボタと降ってくる。
(——…誰のだ)
ホントは誰のかわかってるくせに。ただ信じたくないだけなんだろう? 心の中で誰かが囁いた気もした。
液体が降ってきた方向を見る。
———自分のすぐ横を。
何かが倒れている。血まみれで何かが倒れている。
その何かを、自分の大切な大切な唯一の宝物だと気付いたのは十秒後。
そのまた二秒後に虚しさと悲しさと宝物を守り切れなかった悔しさの混じった大きな自分の絶叫が自分の鼓膜をつんざいた。
**********
「……大丈夫ですか?」
一人の——二十代前半くらいの、男が声をかけてきた。
長い間座りこんでぼぅっとしていた僕を心配してくれたのか否か、わからないが。
僕はそっと横に顔を振ると、男はすこし悲しそうな顔をした。
「…そうですか。——ですよね。こんな状況じゃ…」
そういって僕の腕の中を見る。それに気づいた僕の体は少し震えていたようなのか、男が僕の肩に手を置き、しゃがみこんだ。
「なら、私のところに来ませんか?」
少し意味がわからなかったので男の顔をじっと見た。
それに気づいた男はにこにこと笑って、手を差し出す。
僕は、何かにすい寄せられるようにその手をとった。
ぷろろーぐ、えんど。
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