複雑・ファジー小説
- Re: 主はそれを運命と呼ぶ 夢喰らいと悪魔憑き ( No.7 )
- 日時: 2011/12/16 22:18
- 名前: 李友 (ID: LuHX0g2z)
第3話
隣国フェルヴェリオはもともと、勢力の弱い国だった。
大陸一という訳ではなかったが、メグのいるこの「ベルテイ」よりかは、遙かに「弱小」という名が似合う国だったのにどうしてこんなことになっているのか…。
大人たちは未だ、理由を明かしてくれない。
どうしてなのか…。
気になるところだが、大人たちとメグたちの威圧の差というのは遙かなもので、とてもかないそうにない。
いつの間にか、メグたちには「なぜ、フェルヴェリオ軍がベルテイをうろついているのか」「自分たちがどうしてこんな生活をしなくてはいけないのか」という、疑問は消えていった。
ただ、納得できない気持ちだけを残しながら。
「では、今日は最初に「生物」を勉強いたしましょうか。それじゃあ、ノートを出して。」
最初の授業は生物だった。
カエルだとか蛇だとか、爬虫類が前半だったが今日は何だかいつもと違った授業に思えた。
教科書に書いてあるのは普通のにんげんの絵。それも何人か。
老人、幼児、青年、少女。さまざまな姿。
人間についての授業なのかな…。そう思った。
「皆さんはこの人たちと私たちのどこか違うことに気づきませんか?」
私たちと違うこと?そんなの分からない。見抜けない。
どこなんだ?
「あ…。」
前の席からジャスの声が聞こえた。
そーっと手をプルプル震わせながらジャスは手をあげる。
黒い髪がその震えとともに揺れている。
「ジャスティン=ブランケルト」
冷たい声がジャスに刺さる。
「耳がとんがっています。それから目の色がちょっと青と緑の濁ったような色です。」
「はい、その通りです。」
変わった色の目に、尖った耳ときたか。
そんな幼いころ、昔話で聞かされていそうな妖精の特徴、とても典型的なんですけど、それを私は見抜けなかったということか…。
ジャスはよく気が付いたな、とメグはジャスの方を見た。
頬を真っ赤にして嬉しそうな顔をしている。
あがり症のジャスらしいな…。