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【すばらしき、この世界】

　不意に空を見上げると、飲み込まれそうなほど、深い深い静寂と闇の中に、ぽかりと金色の穴があいていた。
その中で、私に背をむけ立つウサギは、まるでついてこいと言っているかのようで。
手を伸ばしてみるけれど、届きそうにない。
　
　丁度良い。ちょうど、いく場所を探してたんだ。
冷えきった手足も、今ならまだ、言うことを聞いてくれるだろう。
首にかけていた、愛用のヘッドホンをつけなおす。
リピートし続け、何度も聞いたお気に入りの曲が、静寂をぶちこわす。

　あぁ、幸せじゃないか。星屑はこぼれ辺りを照らし。こんなにうつくしい世界。
すばらしき、この世界に、独りきり。
幸せじゃないか。全部全部捨てて。

「じゃあね、ばいばい」

　強い風を全身で感じながら、私はすばらしきこの世界にお別れを告げて。
金色の兎穴に飛び込んだ。


『す』ばらしき、このせかい
2011.12.29