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複雑・ファジー小説
- Re: 『あ』から始まる ( No.35 )
- 日時: 2012/01/06 21:11
- 名前: 結城柵 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
- 参照: コメ返しはまた後で。
【手を繋いで】
夢、なんだろう。
去っていく、大きな黒い背中を、私は必死に追いかけていた。
行かないで、と泣き叫んでも、背中は去っていく歩みを止めようとはしない。
現実の私は誰の背中なのかは、曖昧なまま。夢の中の私は、どうして、なんで、と混乱したまま、泣き叫んで必死で追いかけた。
大きくて冷たい、だけど優しい、その手を握ろうとしても、届かず、べしゃりと転んだ。
「っ…て…、手を、繋いでよっ…!前みたいに…、一緒に、遊ぼうよっ……」
現実の私は、相手が誰なのか曖昧なまま。夢の中の私は、しゃくりをあげながらも叫ぶ。
私の叫びに、振り向いた顔は今にも泣きそうに歪んでいて。あぁ、追いかけてはいけないのだ、と悟った。
現実の私は、そこでやっと、これが夢なのではなく、幼い日の思い出なのだ、と理解する。
夢…もとい記憶の中の私は、ぼんやりと去っていく背中を見つめる。
あの時、無理矢理にでも手を繋いでいたら、何か変わっていたのだろうか?
以前はよく考えていた疑問を、再び頭の隅に押しやり、なかったことにした。
『て』をつないで
2012.01.06
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