複雑・ファジー小説

Re: 『あ』から始まる ( No.40 )
日時: 2012/01/11 20:31
名前: 結城柵 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
参照: 『ぬ』るめのカフェオレ

【ぬるめのカフェオレ】

「どーぞ」
「ありがと」
 手渡されたマグカップからは、中身が温かいことを伝える湯気。持ち手は逆に、ひんやりとした冷たくて不思議な感じだ。別に、火傷したいわけじゃないが。
彼女が、机を挟んで向かい側に座り、じっと俺をみつめる。なんとなく照れくさくなり、ふー、と中身を冷ましつつ飲む。
「っつ…!」
「どうしたの?」
 口元を押さえながら、悶える俺を彼女は不思議そうに見つめている。震えた声で大丈夫だ、問題ない、と返す。
必死に悟られまいとするが、涙が浮かんでくる。口の中がひりひりする。猫舌とか、かっこわるいし、知られたくない。ちなみに、彼女は平然と飲んでいるので、中身はそんなに熱くないはずなんだ。
なおも冷ましながら飲む俺に、彼女は、少し待ってて、と告げて席を立った。
きょとん、としていると、彼女が片手にマグカップを持ち、戻ってきた。机の上の彼女のカップからは、まだ湯気が出ている。俺は首を傾げた。
「ん」
 渡されたカップの中身はさっきまで飲んでいたのと同じカフェオレ。不思議に思って口に含むと…ぬるい。彼女は、というと、超ドヤ顔。ぬるめのカフェオレと俺想いの彼女に頬が緩んだ。