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複雑・ファジー小説
- Re: 『あ』から始まる ( No.50 )
- 日時: 2012/01/24 18:22
- 名前: 結城柵 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
- 参照: 珍しく前後編
【ホットココアを君に 1】
「あ、」
雪が降ってきた。どうりで冷え込むはずだ。辺りはもう、暗くなってきて、人通りも少なくなってきた。
待ち合わせは、二時間前だったはずなんだけど。
不意にこみ上げてきた熱いものを、無理矢理ぬぐい取った。目の前を行くカップルには、ため息しかでない。
「ねぇ、まだ待つの?」
かけられた声に振り向くと、全身を黒で統一した、顔だけは良い友人が立っていた。ファー付きコートがあったかそうだったから、ファーだけ毟り取ってやりたくなった。
「うるさいな、約束したんだもん。それに、折原には関係ないでしょ?」
強がりを一つ吐き捨てると、折原は、楽しげに「そうだね」なんて言った。その表情が、やたらと楽しげだったから、余計に腹がたった。
「そう、俺には関係ない。けど、彼が来なくて泣きそうなのに、強がってる君を見るのは楽しいからねぇ」
そう言って、無駄に整った顔で笑った折原に、悪趣味!と言ってやる。本当に、こいつは悪趣味だ。人間観察が趣味とか。いつか、折原に巻き込まれた事件を思い出しながら、小さくため息。
「ほんと、悪趣味よね、アンタ…って、折原?」
顔をあげると、そこに折原の姿はない。
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