複雑・ファジー小説

Re: 『あ』から始まる ( No.63 )
日時: 2012/02/22 18:53
名前: 結城柵 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
参照: 前後編

【昔から変わらない心を、教えてあげるよ 1】

 小学校に上がりたての頃俺は、二階にある部屋のベランダから飛び降りようとしたらしい。ちなみに、その部屋の下は大きな石が何故かいっぱいあって、落ちたらほぼ確実に死ねる。
らしい、というのには理由がある。と、いうのは、その事件を俺自身が覚えていないんだ。その事件の目撃者は、従兄弟の姉さんだ。
そのとき、彼女が俺に飛び降りた理由を問うと、この世界が嫌いだから、大好きなお姉さんの前で死のうと思って。と、特に表情を変えることもなく、言ったらしい。もちろん、本人は覚えていない。しかしまぁ、我ながら、かわいげのないガキだとは思う。
 いきなり、どうしてそんな話をするの?
殺風景な俺の部屋。他に座る場所がないから、俺のベッドに腰掛ける姉さんが、首を傾げる。無防備に投げ出された白い脚は、見ないように心がける。
 ここが、そのときの部屋だっていうのは、覚えてるよね?
ベランダに続く窓を開けながら問いかける。冷たい風と光が、俺の部屋に流れ込む。姉さんは、俺の質問に頷く。
 ほら、見て。外は快晴だよ。気持ちの良い天気だけど、俺は大嫌いだよ。