複雑・ファジー小説

Re: 飛翔〜アイノソラヘト〜 【第3話始動】 ( No.13 )
日時: 2012/09/14 22:38
名前: 日向 ◆BqHTUDkuhU (ID: kUrH10r6)
参照: 体育祭でやたらと話が長い来賓ってなんなの?ご帰宅しろよ

【第三話 1/2】

 龍牙は雲海に潜り「空牛」を探すが見つからないので更に低空飛行をする事にした。
すると滑走路の方向に簡単に見つかった。
「……いた!」
龍牙はA班全員に無線を繋いだ。
「こちら春咲。『空牛』を滑走路付近にて発見した」
無線を繋ぐとすぐに返信が返ってきた。
ユイトからだった。
『さっすが龍牙!今すぐ行くからな三秒で!』
「おーう、早く来いよ」
龍牙は半ば呆れたように無線を切った。
そしてユイトが言った通りに三秒でユイトの機体が到着した。周りを見回すとA班全員の機体がすでに揃っていた。
ユイトが無線で全員の機体に伝えた——。

『ペイント弾装弾——!』
 
その瞬間一斉に「空牛」に向けて機体の横のミサイル発射口が開いた。

『発射——!』

ペイント弾であるにも関わらずそのスピードは戦闘ミサイルの様だった。
——しかし「空牛」はいち早く気配を察知し、その場を移動していた。またユイトから無線が入った。
『ちっくしょ〜ぉ!よし、こっからは各自で『空牛』をしとめていってくれ!分かったな!?』
「了解だ」
龍牙は瑠梨亜とクゥランに無線を繋いだ。
「こちら龍牙。瑠梨亜、クゥラン聞こえるか?」
『聞こえるぞ。なんだ?何の用だ?』
『もっちろん♪どーしたの?』
対照的な二人の応答を確認した後龍牙は進言した。
「頼みたいことがある。この作戦に協力してくれないか」
『内容は?』
『ふ〜ん。良いよ!どうしたら良いの?』
龍牙は二人に作戦内容を話した。

******

龍牙は「空牛」に突っ込むようにして後を追った。
「空牛」は龍牙を振り払う様に翼をはためかせスピードを上げる。龍牙もそれに合わせ付いていく。

『モォォォォォオオオオオ!』

自分をひたすら追いかけてくる龍牙に「空牛」は威嚇の咆哮をあげた。
しかし動きを止めることの無いその機体に痺れを切らし体の向きを変え突進してきた。
凄まじいスピードで突進してくる4mの巨体。「空牛」はまるで闘牛のようで誰しもが恐怖の対象となる。
——しかし龍牙はこれを待っていた。

「瑠梨亜、クゥラン!」

「空牛」は我を忘れてひたすら龍牙を追う。
その姿は隙だらけだった。
瑠梨亜の機体は「空牛」の腹に、クゥランは背中の方に回り込んでいた。

【ドゥゥゥゥン!!】

「空牛」にペイント弾が二発発射された。
『——グルルルゥ!?』
二発のペイント弾は龍牙の思惑通り「空牛」に命中した。
ベタンという粘りけのある音がしたかと思うと「空牛」は見る間に失速し、その場で力無く羽ばたいている。」

『一丁上がり』
『やったぁっ!』
無線から二人の声が聞こえた。
「二人とも有り難うな。もしA班が一番だったら俺の分の食堂無料券やるからよ」
『おぉ! 龍牙くん太っ腹〜♪』
『もらっとくよ』

『あー、あー聞こえるか?一斉交信だから入ってるか心配なんですけどー、応答願うよー?』
無線からユイトの声が聞こえた。      
「聞こえる。ユイト『空牛』をしとめたぞ」
「おう知ってる。皆、龍牙がペイント弾を当てたみてーだから帰るぞ!付いてこいヨォ——!』
A班全機は地上に向かい急降下した。

******

〜獣舎にて〜

藁の束があちこちに積んであるため干し草の臭いが鼻孔をくすぐる。
「よいしょ、よいしょ。『空牛』って大きいねぇ」
クゥランが口を開く。
「そうだな……体長は私たちの四倍ほどはあるだろう。体重は十倍以上あるんじゃないか?」
「ふええ〜!?凄いね!」
「——お前達喋ってないで手伝ってくれ」
龍牙は梯子の上から喋っていた二人を制した。
「は〜い」
「分かってるさ」

今は獣舎で「空牛」のペイント弾の絵の具落としを行っている。
これは訓練後には必ず行うことになっていた。
「で、ユイト。どうだったんだ?」
龍牙は隣のユイトを見やった。
「え?何が??——あ、あぁ食堂券か!」
ユイトと龍牙は豚毛ブラシを上下させる。
「へっへーん!バッチリもらっちったよ☆」
「——そうか」
「なんかあんま嬉しくなさそー……どしたのー?」
「いや、俺は使わないからな。——クゥラン、瑠梨亜、約束通りに無料券やるよ」
龍牙は上から二人に言った。
「待ってました♪」
「どーも」
瑠梨亜は龍牙から無料券を二枚受け取り、クゥランに手渡した。
その様子を見たユイトはニヤついた顔で言った。
「罪な男だなァ。春咲君は」
「は?」
「いやいや、何でもないって!もう『空牛』綺麗になったぽくね?もう行くぞー」
ユイトは梯子から勢いよく飛び降りた。