複雑・ファジー小説
- Re: 飛翔〜アイノソラヘト〜 【第四話始動】 ( No.17 )
- 日時: 2012/11/28 20:55
- 名前: 日向 ◆BqHTUDkuhU (ID: kUrH10r6)
- 参照: 体育祭でレーン横切る子どもとかなんなの?帰れよ
【第四話 1/2】
〜放課後、演劇部部室にて〜
「さて、今日は新入生が入ってくるからね。気を入れていくわよ!」
「「はい!!」」
演劇部室内に気合いが込められたかけ声が広がる。
部員は三十人ほどで二年生が部員数の半数を占めている。
部長は校内ではかの有名なユリ・レイバーであるから、文化祭などに行う劇は高い人気を誇り体育館は超満員で、立ち見さえもいる。
部活そのもののレベルも高く演劇コンクールでは必ずと言って良いほど入賞している。
配役は完全オーデション制であり、異議は認めないらしい。
村雨高校ではひときわ敷居の高い部活だが入部希望者も多い。
「失礼します……!」
突然ドアの方から声がした。
そこには金髪で童顔の一年生が立っていた。無論、夜月である。
「あっ——あの、入部希望なんですけどっ、先生にっ、ここに来いってっ!」
見事なテンパり具合だった。
それを見かねた部長、ユリは前に進み出て笑って言った。
「フフッ、落ち着いて?」
「すいません……。こういうの初めてで」
「一人で来たの?」
「いえ。なんていうか……」
夜月は目を泳がせながら自分が入って開いたままのドアを見つめた。
夜月の視線に応えるようにそこから人影が演劇部室に入ってきた。
「——よう、ユリ」
無論、龍牙である。
「龍牙!? どうして?」
「あー? なんかこいつの付き添いみたいなもんだよ」
それを聞いた途端ユリは目を細めて口角を上げた。
「じゃあ龍牙の彼女なのね」
「「えっ!?」」
龍牙と夜月は口を揃えて否定した。
「やっぱり、そうなんだ」
「そんな訳無いだろ!?」
「そうです! 違いますよ!!」
他の演劇部員はすっかり置いてきぼりにされている。
「二人ともムキになっちゃって、冗談よ冗談。ま、それは置いといて……あなた名前は?」
ユリは夜月を見据えて訊ねた。
「香道夜月といいます。香るに道でかおりみちで、夜の月でやづきです」
「香道さんね。私はユリ・レイバーよ。ここの部長をやっているわ、よろしく」
「はいっ!」
(——紹介する必要も無いな)
龍牙は安堵して夜月に激励を飛ばし寮に戻ろうとした。
なのだが、
「早速だけれど、香道さんオーディション受けてくれないかな」
「え?」
「一学期の最後に校内発表をするの。その劇の配役を決めようと思って」
夜月は少し戸惑ったがすぐに言われていること把握し返事を返した。
「分かりました。お願いします! 何をすれば良いんですか?」
ユリは少し考え込むような仕草を見せ、とんでもないことを言った。
「アドリブで私とラブシーンでも演じて貰おうかしら? 龍牙も残っていいわよ?? ギャラリーがいた方が燃えるから」
「マ、マジか?」
龍牙は身体中の血液が逆流し、冷たくなるのを感じた——。