複雑・ファジー小説
- Re: 飛翔〜アイノソラヘト〜 【第2話始動】 ( No.8 )
- 日時: 2012/09/10 12:19
- 名前: 日向 ◆BqHTUDkuhU (ID: kUrH10r6)
- 参照: 大事なトコは考えてあるけどのりしろが見つからぬ
『第2話 1/1』
龍牙が顔を洗い終わって教室に戻るともう授業は終わっていた。
「どうだったか…?」
「!?」
不意に声を掛けられた龍牙は声の方へぎこちなく振り向いた。
声の主はタイソンだった——。
「あの夢を見ていたんだろう?」
声の主が分かったところで龍牙は安心したように溜め息をついた。
「——ふぅ。タイソン隊長お言葉ですが」
「今は敬語なんぞ使うな。あの夢だろう?」
龍牙はハッとした様な顔で目を見開いたがすぐに噛みつく様なな表情になった。
「それではお言葉に甘えて。———だったらなんだ?『今度は授業を居眠りせずに聞きます』それでいいだろ?」
「お前自身それで良いのかは分からんな。——龍牙、最近疲れているんじゃないか?」
「——別に?」
「翔奈を守りたいのは分かるが。パンクするんじゃないぞ?」
『それ』を聞いた途端龍牙は声を大にして言った。
「うるせぇ!!」
教室に龍牙の怒声が響き渡った——。
幸いにも教室にいる人数は少なかった、がいきなりの怒声に皆がみんな驚いた様子だった。
「——くっ!タイソン隊長、もう出ていってもらえませんか」
「そうだな。そろそろヤニが足りなくなっていた頃だったんだな!!じゃあな龍牙! また放課後で会おうぞ!?」
そう言い残しタイソンは去っていった。
残された龍牙は苦渋の顔を浮かべ握り拳を震わせていた。
******
最後の午前授業は移動教室だった。
龍牙はユイトと他2人で廊下を歩いていた。
一人が口を開いた。
「なぁ春咲。どうしたんだ? 朝のアレは……」
「そうだヨォ。龍牙くん様子がおかしかったけど?」
前者の彼女の名前はエルシック・瑠梨亜。
空軍科では珍しい女子生徒で龍牙の女友達でもあった。
背が高く、流れるような紫色のロングヘアーを首元で結んでいる。
男子にも勝るとも劣らない機体の操縦能力で一目置かれる存在だった。
後者の彼女はリ・クゥラン。
瑠梨亜と同じで空軍科の女生徒。
茶髪のセミロングで毛先だけ黒いという雑種犬カラー。犬耳カチューシャを愛用している。瑠梨亜と仲が良くいつも一緒にいる。
「お前達には関係無い」
「おいおいィ〜。龍牙それは仲間に冷たいんじゃね?この際言っちゃおう!」
ユイトが巫山戯たように言う。
「ユイト。言ったらどうなるか分かるよな?」
「うわー怖っ!!」
ユイトは何事も無かったように何でもない別の話題を切り出した。
「——次の教科ってなんだっけ?」
「『生物』だ。時間割くらい見ておけ」
溜め息混じりで瑠梨亜が言う。
「いやぁ〜オレは瑠梨亜の持ってく教科書とか見て判断してっから」
「やめてくれ……」
一行は楽しげに、幸せそうに理科準備室に入室した。
龍牙はこの時が好きだった。空軍科に入学しているからこのメンバーの誰かがいつ欠けてしまうかも分からない儚い一瞬が龍牙は大切だった——。