複雑・ファジー小説

Re: 飛翔〜アイノソラヘト〜 【第2話始動】 ( No.9 )
日時: 2012/09/10 12:25
名前: 日向 ◆BqHTUDkuhU (ID: kUrH10r6)
参照: いやコレ前にも書いてたけどあせって消しちゃって(泣

『第2話 2/2』

——放課後。専用滑走路にて。

校庭の一角に設けられた空軍科専用滑走路でタイソンの声が響き渡った——。
「2年生諸君!この度は一年生から進級したお前達には二年生専用訓練機体。『P-8』の使用許可が下った!どういう意味か分かるよな? そうだ!お前達はこの機体を使用しての訓練が可能になった!」
タイソンは自らの横に設置してある「P-8」を景気よくバンと叩いた。
タイソンの膂力で機体のボディがへこまないだろうかと危惧している生徒が苦い顔をしている。
「機体の中は一年の頃に使用した『P-7』とほぼ同じだから安心しろ。数も十分にあるから喧嘩するんじゃねーぞ!それでは学校敷地内バリアを張った後、獣舎へ向かい『空牛』を空に放て!機体は各班の滑走路に用意したからな!訓練内容は準備が整ってから言い渡す、良いな!?」

「はい!!」

二年生徒は敬礼をし、方々に散った。
その中に訓練専用スーツに身を包んだユイトと龍牙が期待に胸を膨らませていた。

「なぁっ、龍牙!なんか乗るの久しぶりじゃね!?」
「そうだな、言われてみりゃあ……一年三学期から全然乗ってないよな!」
「おっ、俺『空牛』の方手伝って来るわ!」
「おう、行ってこい」

龍牙はユイトが獣舎の方へ行くのを見送ってから空を仰いでつぶやいた。
「早く……飛びてーな!」

******

「空牛」とは空陸両用のクローン動物である。
ホルスタイン種とムササビや皮膚が伸びる病の「翼猫」の遺伝子を組み込んだ動物である。
体長は4m〜5m、体重二トン〜三トンと大型。
よく自衛隊空軍や空軍科のある学校で訓練用に飼われている。
その訓練というものが空牛にペイント弾を撃つというものだが、政府も国を守るためにそれを行うものなので訓練内容を承認していて動物虐待などという意見も既に消化されている。

「学校敷地内バリアOKです!」
空牛は鼻息荒く、今にも拘束具を引きちぎらんとしている。
「よし!!『空牛』を放て!」

生徒が拘束具のロックを解除した途端その巨体が空へ一斉に舞い上がった。同時に突風が地上に巻き起こる。そしてすぐに見えなくなってしまった。
「おぉ、活きが良いのぅ!各班、『P-8』に乗り込め!」
龍牙達A班は「P-8」に乗り込んだ。
「こ、これが『P-8』か…!」
龍牙は内部を見て思わずつぶやいた。
タイソンの教えた通り、内部のポイントの位置などは「P-7」とさほど変わらないがレバーの切り替えが何段階か増えていたりしていた。
親機のユイトの無線からの掛け声でエンジンを掛けた。
「行っくぜぇぇえ!」
再度、地上に突風が吹きすさぶ。
雲を突き破り、上空10000mにまで5秒と掛からず到達する馬力に龍牙は驚くと同時に興奮を覚えた。
「凄い……!」
限りなく続く雲海を見渡し「空牛」を探す。
だが何処へ消えたのかその姿はない。
『みんなァ! 聞こえっか?』
不意に無線からユイトの声が聞こえた。
龍牙は無線のボリュームと感度を上げて、応答した。
「こちら龍牙、聞こえるぞ」
『あー、聞こえるか?さっきな、班のリーダーだけにタイソン隊長が言ってたんだけどさ!』
「何だ?」
『一番に空牛見つけたら食堂一週間無料券貰えるんだってよ!張り切っていこうぜ!』
「あぁ、そうかよ」

龍牙は自ら無線交信を切り、アクセルペダルに足を乗せた。
「それじゃあ行くか!」

そして、思い切り体重を乗せた——。