複雑・ファジー小説

Re: 【厨二的擬人化】聖剣少女【コメントを下さい】 ( No.1 )
日時: 2012/01/07 19:05
名前: 白波 ◆cOg4HY4At. (ID: GyOijjIz)

零章〜剣は持ち主を選ぶ〜 第一節

 ——ラグナロク一週間前、東京——
 その女、誠条渚は部屋のベッドで意味もなく寝転がり、天井を眺めている。
 暇で暇で、なんの表情の変化もない彼女の整った顔を見ると、まるで日本人形を見ているような印象を受ける。
 彼女の見るからに大和撫子と呼べる顔立ちと、艶のある全く脱色も染められることもなく美しく育てられた腰まであるストレートの黒髪。そして、漆を塗ったかのように綺麗な黒色をしている瞳。さらに、スタイルの良い身体に着せられた私服で着ている青い着物がよく似合い、動かない今の姿はまるで日本人形と言えた。
「でも、BlueStarが休止中だからって動かないのもあれだし、百萌誘って練習するか……」
 BlueStarとは彼女の所属するアマチュアガールズバンドで、現在は業界からもそこそこに目をつけられている急上昇中のバンドである。渚はそのベースで、百萌と言うのもそのバンドのドラムである。
 そして、外着の洋服に着替え、ベースを入れたケースを担ぎ、妹の有紗に外出の旨を伝えて近くにあるレコーディングルームのような練習室のある所へと向かった。
 そこに向かうにあたって、街中を歩いている。そこで、彼女は数人の男に囲まれている二人の少女を見た。
 そして、彼女は根っからの、童話で見るような、正義の象徴のような人間……。
 当然、ここでとる行動は男達から少女を助けるだった。二十五にもなる渚なのだが、どうやらコレばかりは老後になっても抜けそうにない。
「ちょっと、アンタら何してんのよ! その子達を離しなさい!」と、ケースを置いて、彼女が取った行動は……いきなり、手前の一人の腰を狙って、鋭く放たれた蹴りだった。
 その、空手上級者のような鋭い蹴りが、無防備な男の腰に直撃し、男の一人が悶絶する。
 無論、その程度で彼女の正義が崩れ、攻撃が止まることはない。
 当然男達だって反抗する。ある男は彼女を殴りつけ、ある男は彼女に掴みかかったり、蹴りつけたりしようとする。
 それを彼女は後ろに下がり同士討ちさせたり、当たる前に、カウンターを放ち先に倒すことによって攻撃を逃れた。
 結局難なく男達を退け、立ち尽くす少女達に「大丈夫だったかい? 怪我は?」と、笑顔で問い掛けた。
「私達は大丈夫ですけど……あなたは大丈夫だったんですか?」
「当然。じゃあ、アンタ達もああいう男には気をつけるんだよ。それじゃっ」それだけ言って、立ち去ろうとすると「あの、あなたのお名前は……」そう訊かれた。
 渚はまたか……と思いながらも「誠条渚。BlueStarってバンドのベースだ。良かったら路上ライブに来てよ。まあ、今は休止中だけどさ」そう残して今度こそ立ち去った。