複雑・ファジー小説

Re: 【グロ注意!】聖剣少女【コメントを下さい】〜第七節〜 ( No.20 )
日時: 2012/03/09 00:32
名前: 白波 ◆cOg4HY4At. (ID: GyOijjIz)

零章〜剣は持ち主を選ぶ〜 第八節

 さて……火崎百萌にはもう少し待ってもらうとして、今回はラグナロクに相応しい、実力者を紹介したいと思う。

 今から紹介する早槍京子と言えば、高校どころか、日本。剣道をやっている者なら、世界にすら名前が知れた有名な剣士だ。
 高校総体、優勝。全日本大会、優勝。国際大会、第二位。と、今回のラグナロクの中では、飛び抜けた実力を持つ、いわばスーパー高校生というやつだ。
 しかし、彼女は才能もさることながら、その練習量も凄いのだ。エジソンの『天才は一%の才能と九十九%の努力で出来ている』を、再現したような女だった。

 何が彼女をそこまでさせるのかと言えば、親友であり、ライバルでもあるこの数節後に出てくる彼女、芽上凜の存在が大きいのだろう。いや、それが全てと言っても過言ではないかもしれない。
 早槍京子は、芽上凜について一度口を開けば、永遠と語り続けるまでに、彼女に対してライバル意識を燃やしていた。もはや、見ようによっては別の感情すら見えてくるようである。

 まあ、競技は剣道と空手という違いこそあれど、共に競い合い、世界トップレベルまでに成長していた。
 そんな最強の剣士は、円卓の騎士団最強の騎士、サー・ランスロットが使ったとされる『最強の騎士の使いし剣“アロンダイト”』に出会うことになる。

 ——一年半前、京都——

 この頃の季節は春。早槍京子はいつものように、竹刀を肩から掛け、自転車に乗って余裕を持って登校している。
 途中で擦れ違う部活の後輩や、クラスメートに、一人も逃すことなく挨拶をしているのは早槍京子の人間性を表しているだろう。
 誠条渚のように、手を加えない真っ黒な髪を武士のようにポニーテールに結い、赤渕のメガネから覗かせるつり目気味の黒い瞳、サイズが合っている制服を着崩すことなく着ていることも、早槍京子の人間性を表している。

 早槍京子。彼女はいつも品行方正、勉強こそ普通だが、人を纏めたり仕切ることに長けており、私立新嶺高校の生徒会長を勤めていた。
 剣の道に進むことになる彼女は、周りからは一時期反対されていた時も有ったのだが、早槍京子は『人間としての成長の機会』だと言い、引くことはなかった。
 良くも悪くも、彼女は強情なところがあるのである。

 そんな彼女は今日も学校を終え、生徒会の仕事をこなす。
 周りからのサポートが要ることもあるが、彼女の人間性故か、そのサポートを拒むような人間はいなかった。
 生徒会の仕事が終わり、彼女は道場でもある自宅へと帰って行く。剣道部にも登録はしているのだが、週に一度ぐらいしか彼女は部活には出ず、自宅での稽古が基本となっていた。

 その帰路の途中、早槍京子は道に迷っているらしき一人の外国人らしき蒼髪に赤い瞳の少女を見つけ『役に立てれば』と思い、ブレーキを掛け彼女に話し掛けた。

「あの、何かお困りですか?」
 道に迷いましたか? などと失礼なことを言うこともなく、このような内容のことを早槍京子は少女に世界に進出するにあたって覚えていった英語で尋ねる。
 すると、少し凛々しい雰囲気もある彼女は「お恥ずかしい限り、道に迷ってしまったようでな。早槍道場という場所が在ると聴き、そこに行くための地図まで書いてもらったのだが……どうやらウチには地図を読む才能と言うものが全く無いらしい」そう言いながら少女は、彼女に地図を渡し「その……出来ればでいいのだ。早槍道場まで、ウチを送ってくれないだろうか」と、少々恥ずかしそうに、思いの外かなり流暢な日本語で言う。
「早槍道場は私の自宅ですから、何か用が有るのなら、付いてきてください」
 それを聴いた少女は驚いたように「なんと、君の家であったのか。どことなく運命を感じるよ。ありがとう、ご一緒させてもらう」

 家が近くなってきたところで、早槍京子はそういえばといったように「そういえば、あなたはなぜ私の家に?」と、少女に合わせて自転車を押して歩きながら尋ねる。
「日本最強の剣士ってやつを見てみたかったのだ。そして、ウチ……いや、それに相応しいかどうかを見極めたいのさ。お相手してもらえるかい?」
 道場に来る子供をたまに教えたり、世界経験が豊富な彼女は、少女がそう言ってきても、特に焦ったり、挙動不審になったりすることもなく「まあ……そういうことなら、一回だけですが、良いですよ。私は早槍京子です。あなたは?」と、承諾し、少女に尋ねる。
「ウチはロイズ・ランシアだ。アンタとの勝負、期待してるよ」そう言ってニッと笑顔を見せた。
 そして、雑談を交えながら早槍京子の家へと向かっていった。

 その後行われる試合で、早槍京子が圧倒するかと誰もが思っていたこの勝負は、ロイズ・ランシアの驚くほど高い技術により、早槍京子と拮抗し————が勝利することとなる。