複雑・ファジー小説

Re: 【厨二的擬人化】聖剣少女【コメントを下さい】〜第八節〜 ( No.21 )
日時: 2012/01/11 20:09
名前: 白波 ◆cOg4HY4At. (ID: GyOijjIz)

零章〜剣は持ち主を選ぶ〜 第九節

 結論から言わせてもらおう。
 火崎百萌は誠条渚を待ち続けた。三十分を越えた辺りで、急用が出来たのではないかとか、困っている人を見かけ、助けようとして、こんなに遅れているのではないかなどと考えていたが『多分後者だろう。なぎさんだし』と、勝手に決めつけ、誠条渚が来るまで、待ち合わせ場所で待つことにした。断るような内容のメールも来ていないため、結局彼女は誠条渚を待ち続けたのだ。

 一時間と少しが経った時に、練習場所のドアが、蹴破られるように開け放たれた。
 当然、それをやった人間は誠条渚で「もー……ボク、待たされすぎだよ……ってあれ? そのパツキンちゃん、誰?」恨み言を一つ漏らし、誠条渚を迎え入れ、そこにいたカーラ・エイシアの存在に当然疑問を持つ。
「コイツは、道で会って、何でもアタシに用があるようで、むげに追い返すのも失礼だと思ったから、後で話しを聞こうと思い、連れてきたんだ。名前は……聞いてなかったな」やってしまったとでも言いたいように、自分の顔を右手で押さえる。
「えっと、私はカーラ・エイシアですの」火崎百萌がパツキンちゃんと呼んだ彼女は、小さくペコリとお辞儀をした。

「了解。キミは、カーラたんね」火崎百萌がそう言うと、カーラ・エイシアは間髪入れずに「カーラたん!?」と驚きの声をあげた。まあ、初対面の人物にいきなりたん付けされれば、驚かざるをえないであろう。

「だって、見た目子供っぽいし……胸が」
「失礼ですわね! 私だって、気にしてますのよ!」そう言った後、ペタペタと自分の胸を触りながら、少し落ち込んだように俯いた。
 それを見て、チャンスといったように「じゃあさ、おわびにボクが、カーラたんの胸を大きくしてあげようか?」と訊く。
 その言葉に顔を上げ「えっ? 本当ですの?」と、喜びに満ちたような顔で火崎百萌を見つめる。
「当然! なぎさんの胸だって、ボクが揉んで大きくしたんだよ! だから……そのペチャパイを揉ませろー!」そう言って勢いよく、陸上選手に負けず劣らず……いや、むしろ勝っているのではないかというようなロケットスタートを決め、勢い良いカーラ・エイシアに飛び込んで行った……のだが「止めろ! アンタは初対面のエイシアさんに、何してやがる! しかも、根拠のない既成事実を作るんじゃない!」誠条渚が、飛びかかる火崎百萌を、叩いて止めひとまず難を逃れた。

 痛がる火崎百萌の回復を待ち、数分後……。
「何も、いきなり叩くことは無かったじゃないか! ボクだって、カーラたんのペチャパイをなぎさんみたいにしようと思ってなんだよ?」
「だから、そんな確証ないだろ!」これには反論出来ないかと思われたが「あるよ! なぎさんも聖羅も、ボクが胸を揉んでから、ワンカップ大きくなったじゃないか!」それを言われ「くっ、事実だから言い返せない……」そう言って折れたのは、誠条渚の方だった。
 基本的に、言い争いなら誠条渚に分が有るのだが、今回に限っては、火崎百萌が胸を揉めるか、揉めないかの問題だったので、いつも以上の力を発揮する、ガチレズの火野百萌だった。

「じゃあ、エイシアさんに権利を委託しよう。当人の意見は尊重されるべきなんだ」勝てる気がしないため、カーラ・エイシアに全権委託する策を取ることにした。
「私、胸を大きくするためなら、火崎さんの提案を受けますわ!」
「この判断はミスだったかな……」そう、誠条渚は呟いた。

 さて、非常に残念なことだが、そのシーンと、練習風景は割愛させて頂くとして、帰り道と行かせてもらおうと思うが、一部のみを切り取っておこうかと思う。

 ひとまずボーカル兼ギターはいないのだが、一曲合わせたところで「えーっと……カーラたん、どうだった?」と、演奏後で多少汗をかいている火崎百萌がそう訊くと「えっ? あ……凄い気持ちよかったです……」リンゴのように顔を赤らめながら、全く別の感想をカーラ・エイシアは述べる。
「明らかにそっちじゃないだろ! 演奏の方だよ!」誠条渚はそうやって間髪入れずにツッコんだ。
「え、あぁ……そちらですのね。とてもお上手かと。良い演奏でしたわ」誠条渚の質問に対し、凜とした雰囲気を取り戻した彼女が、二人の演奏を誉める。
「でも、そんなに気持ちよかったの? なら、また今度……ね?」
「はい……是非、お願いしますわ……」火崎百萌の言葉に対し、再びカーラ・エイシアが顔を赤らめたのを見て『コイツら……ダメだな』と、早くも諦めかけた誠条渚だった。

 そんなことがあり、彼女達は帰路についている。
 火崎百萌も、途中まで、電車の駅に着くまでは同じ帰路なので、三人まあ、二人と一本でもあるが、そのメンツで帰っていた。

「で、カーラたんはどうするの? なぎさんの家に行って、話しをするにしても、家とか遠いなら、ボクの家に来る?」
「ホテルに泊まろうかと思っていましたが……火崎さんがそう言うならば……」そこまで言ったところで「止めろ。条令が黙っていないぞ。なら、ひとまずアタシの家で預かるから、それで良いな?」今度ばかりは誠条渚が止めに入る。
「別に私はそれで構いま……」それを遮るように、いや、遮り「ダメだよ! カーラたんはボクの家で預かるんだ!」そうやって火崎百萌がカーラ・エイシアに抱きつこうとするも、誠条渚がそれを、ある一言で阻止する。
「ダメだ。ドラム、別のヤツ入れるぞ?」
「わかりました。すいません。ボクが悪かったですから、それだけはご勘弁を……」現実味のある一言により、あっさりと火崎百萌は引き下がった。

 そして、その後も数分歩き「じゃあ、ボクはここで。またねー」と、駅の人ごみに混ざっていった。
「じゃあ、私達も帰ろうか」と、誠条渚とカーラ・エイシアは、夕焼けがだんだんと落ちていく道を見ながら、誠条渚の家に帰っていった。