複雑・ファジー小説

【厨二的擬人化】聖剣少女【コメントを下さい】〜第十節 ( No.27 )
日時: 2012/03/21 00:38
名前: 白波 ◆cOg4HY4At. (ID: lD2cco6.)

零章〜剣は持ち主を選ぶ〜 第十一節

 早槍家に来て数時間が経ち、ロイズ・ランシアは、完全に早槍家に馴染んでいた。
 試合にの話し入る前に、少しだけその様子を話そうかと思う。

「そうくれば、竹刀で受けて、距離をとりますね」剣術について家族全員とロイズ・ランシアで話している。現在は、予想外の胴に対する対象らしい。
「いや、ウチなら相手の剣を叩きつけて、胴の範囲から外し、小手だな」実際に竹刀を持つようにしながら、その動作を実演して見せる。流石はランスロットの使った剣と言うべきか、その動きは無駄が無く、早槍京子も『こんなレベルが世界で無名なの?』と、疑問を抱くと同時に、その技に感心して後の試合への期待を抱いた。

「でも、リスクが高すぎません?」早槍京子が言うとおり、コレにはその後再度無防備な状態で胴を放たれる可能性もあり、また胴の範囲から攻撃を外しきれるとは限らない両刃の剣。しかも、自分の方がリスクが高い技だった。
 さらに、技術も必要なため、この二人のレベルならともかく、半端な実力な剣士が扱うのは無理があるだろう。
「リスクなど恐れていたら、(戦には)生き残れないぞ?」
「確かに、リスクを恐れればすぐ(世界二位の座は)取られてしまいますね」
「そうだ。だから、相手が強ければ一歩踏み込む剣術、勝ちを取りに行く剣術が必要なんだ」ちなみに、ロイズ・ランシアは“一本を”取られるを、“命を”殺られると勘違いしている。この辺りが現在の剣士と、中世の騎士の違いなのだろう。

「ほう、ランシアさんは良いことを言うな」引退こそしているが、元々は有名だった父の早槍剣砥が感心したように話しに入る。
「いやいや、こんなにも美味しい夕食を食べさせてもらったんだ。せめてこれぐらいはしなくては、騎士道に反する。むしろ、この程度では足りないぐらいだ」
 片付けや、掃除などを手伝いながらも、まだ足りないと言えるのがロイズ・ランシアの性格とも言えよう。やはり、彼女は一人の騎士の剣で、同時に一人の剣なのだ。
「じゃあ、その分をこの後の試合で貰いますよ?」早槍京子が面白そうにそう言うと「当然だ。むしろそれで返せるなら好都合だ。勝っても良いのかな?」
「はい。勝てるならですが。むしろ、そのレベルの相手とやれるならばお釣りが来ますよ?」
「なら、その時は、何か要求させてもらうよ」そう言って、彼女はニヤリと笑った。

 ——一時間後、練習場——

 早槍家の道場内では、一人の剣士と一人の騎士が竹刀を構えて向かい合っている。
 剣士は胴着を身に着け、騎士は早槍家にあった鎧甲を身に着けている。彼女にとっては、現在使われる胴着よりも、鎧の方が馴染んでいるらしい。重さは桁違いだが、騎士はなれている方を選んだ。
「それで動けるんです?」竹刀を構えたまま早槍京子が軽く質問する。
「ああ。剣術も実戦向きらしくなりそうだが、そこは許してくれ」
「はい。分かりました。では、始めましょうか」
「よし」
 一礼した後、二人の纏う気配が、より色濃くなり両者共に黙り込む。
「——始め!」父のその言葉により、剣士と騎士の勝負が始まった。

 それと同時に、ガシャガシャと音を立てながらロイズ・ランシアが竹刀を右下方に構えて詰め寄ってくる。
 これに対して、早槍京子は胴。可能性があっても小手と決め付け、それに対応出来るように竹刀の位置を若干変化させる。
 そこから、早槍京子の籠手に向けて、ロイズ・ランシアの竹刀が威圧感を出しながら浮き上がるように彼女を狙って放たれる——と思っていた。少なくともコンマ五秒前までは。

 しかし、彼女の竹刀は籠手から微妙に外れ更に上方へと上がっていく。そこから放たれるのは——面打ち。
 予想を完全に外されたその一撃に対応が一瞬遅れ、完全な対応は出来なかった。
 防げなかった訳ではない。だが、ロイズ・ランシアが放った力強い一閃の振り下ろしにより、とっさに上方に上げて防いだその竹刀は、力負けしてその竹刀を落としてしまった。つまり、反則を一度取られてしまったことになる。

 ロイズ・ランシアの力は、予想外に、予想を遥かに上回り強かった。芽上凜以外の人物に竹刀を落とされることなど無いと思っていた。そんな早槍京子は驚いたようにたたき落とされた竹刀を拾う。
「まさかここまでとは……。なぜランシアさんのレベルで無名なんです?」
「いや、ウチは一本を取れるはずの一撃だったのに、反則で済ませるとは、君も大したものだよ。ウチが無名なのは……まあ、ちょっとした理由があるんだよ」有利な状況に立ったのは自分にも関わらず、ロイズ・ランシアは早槍京子を褒め、無名な理由をぼかした。
「まあ、それは良いです。では、再開しましょうか」

 そう言って、もう一度始めの合図があり、今度は早槍京子から攻撃が始まった。
 ロイズ・ランシアの攻め方とは違い、早槍京子は最初から一本を狙わない。鍔迫り合いを繰り返し、相手に隙を作りそこを確実に突き、一本を奪い取る、攻めの剣道と言うよりは守りの剣道といえるようなスタイルの剣道である。
 その隙を作る連撃に、ロイズ・ランシアは余裕で対応する。
 時には緩急を付け、時には強弱を付ける反撃の難しく、隙を作ることも容易な組み立てなのだが、ロイズ・ランシアに隙は一切生まれない。このままでは高校生の基準時間、四分を過ぎることも必須である。
 そうなれば、どこかで一本を取る賭けを仕掛けるしかない。ロイズ・ランシアの攻撃を誘い、防いでから一本を取れる反撃を放とうにも、彼女の技術と力を加味すれば、それも危険な賭けといえ、それを実行には移せなかった。
 子供の頃に芽上凜と試合をやり、反撃に移れなかったことを思い出すと尚更である。
 ならば、五秒後。ロイズ・ランシアの右胴に牽制の一撃を放った後に、逆胴打ちを喰らわせる。それが早槍京子の算段だった。

 五秒前、後方に下がりながら竹刀を鋭く振り下ろし、それを単純に止められる。

 四秒前、止められた竹刀を一瞬構え直し、もう一度同じような一閃を放ち、それをロイズ・ランシアに押し返される。

 三秒前、押し返されると同時に突きに体勢を移行し、それを放つも、ロイズ・ランシアは後ろに下がることにより、それを避ける。

 二秒前、下がったロイズ・ランシアに詰め寄り、フェイクの為の逆胴打ちを見せる。
 この時の逆胴打ちは威力、速さ共に八割程度。ロイズ・ランシアの技術をもってすれば、余裕で止めることの出来る一撃である。

 一秒前、先程のスピードよりももう一割速い、全力に近い胴打ちを放つ。
 これには、ロイズ・ランシアも少し力負けし、一瞬竹刀が胴へと押される。

 それを待っていたように、零秒を迎え、彼女の全力の逆胴打ちがロイズ・ランシアを襲い、鎧甲に炸裂。
 完全な有効打撃で、万が一有効打撃を取られていなくても良いように即座に構え直す。残心を貰うことも当然含んでいるのだが、彼女はそれをほとんど反射的に行った。

「一本! 早槍京子!」父の一言により、二本先取の一本目。その勝者は早槍京子に決定した。