複雑・ファジー小説
- Re: 【ジャンケン】聖剣少女【誰かコメを】第十九節更新 ( No.62 )
- 日時: 2012/04/15 21:36
- 名前: 白波 ◆cOg4HY4At. (ID: lD2cco6.)
零章〜剣は持ち主を選ぶ〜 第二十節
自分の話す内容を纏めるためにしばし思考する彼女。
即興で長い文章を話すことが出来ない彼女に早槍京子は内心溜め息を吐きながらも彼女らしいと思い、内心は微笑んでいる。
その後も十分ぐらい考えてからようやく「よし! やっと纏まった!」と口を開く。
この時に限っては早槍京子も流石に呆れきっていた。
「えーっと、これは昨日バスに乗ってたときの話なんだけど……。ほら、私ってバスに乗って帰るじゃん? で、昨日は二人席に座ってたんだよ。でね、隣りに座ってきた人が……ゴスロリだったんだよ!」
ゴスロリの部分を嬉々として話す彼女を見て、「ごめん、全く話が見えてこないんだけど……はい? ゴスロリ? え? どういうことなの?」そう言いながらキョトンとして、彼女がなにを言っているか全く分からないと言いたげにする早槍京子。
しかし、そんな早槍京子を尻目に彼女は自分の話しを続ける。どうやら、一度話し始めたら中断されるということが嫌らしい。
常にマイペースでGoing My Way。これが芽上凜の基本だ。
「でね、その子が泊まる家が無いから私の家に泊めてもらいたいって言ったんだけど……」
「ちょっと待って。いくら何でも急展開すぎないかしら。それ、少年漫画も驚きの急展開よ」
「事実だから仕方ないじゃん」
マイペースとは言っても、いちいち止められると流石に反応するらしく、いちいち止められることが不満だといった風に、不機嫌そうに頬を膨らませ「うー……」という声を出しながら言う。
そして彼女は溜め息をつき「もういいや、結論から言うよ。会議とかでもあるじゃん、結論から言って——ってやつ」と、どこか諦めたように言う。
なぜ芽上凜の方が譲歩したようになっているのかとか、そもそも十数分は考えたというのに、その結果があれなのかとか、そんなことを考えた早槍京子だが「うん。私もそうした方が良いと思うわ」と少し子供っぽい彼女に対して、大人な対応で返す。
こんなことが日常的に行われ、流石に慣れているため、対応もスムーズになっていた。
「では、結論から言って——私は、家に泊めたゴスロリっ娘から、剣を使った闘いみたいなヤツに、出てほしいと言われました。以上!」
いきなりファンタジーの世界へ入った彼女に、早槍京子は呆然として「え、それなんて小説……?」と、質問するが、その直後に、先程の言葉に妙な既視感があることに気付く。
その既視感の正体を探っていく内に、昨日の出来事が関連していることを彼女はすぐに気付いた。
これは、一人の少女が芽上凜の元へ訪ねてきたこの状況は、昨日自分の元へと訪ねてきたロイズ・ランシアと似ているのだ。
もしかしてと思った彼女は、心配を掛けたくないがゆえに、言わなかった“ラグナロク”の事を含めて彼女に真相を問うことにする。
「凜、知らなかったら知らないで良いんだけど、ラグナロクって知ってるかしら?」
その質問に対し「えーっとねー……」と、額に手を当ててしばし考え込む彼女。
先程のように時間を要するかとも思われたが、話す内容を纏めるという訳ではないのでそんなことはなく、昨日の事でもあるので、案外すぐに思い出せたらしく、早々に口を開く。
「あ、聴いたことあるよ! 昨日、ラディアちゃんが言ってたヤツがそれだったハズ」
「やっぱりね。で、凜。あなたはそれに出るのかしら?」
「それを京子に訊きたかったんだよー。剣の道を歩む京子からすれば出るしか無いんだろうけど、私は剣道とかもずっとやってないし、どうなんだろうなーってさ」
芽上凜は壁に当たったり、悩んだりした時は、両親達よりも先に、親友でライバルである早槍京子に相談する。
だから『困った時の京子頼み』というものは彼女の中では、もはや当然の事柄で、例に漏れず、今回も早槍京子の意見を聴いてから決めるようだ。
余談なのだが、早槍京子が言った意見は、九割を超える確率でそのまま実行されている。
そのことに対して『やっぱり』とか『まあ、そんなことだろうとは思ったけど』とか、そんなことを思いながら、芽上凜の事もラグナロクに巻き込むかどうかを思案する。
ライバルとして分野こそ、自分が有利な物で勝負したいという気もあるのだが、昨夜ロイズ・ランシアが言っていた『決して傷を癒さぬ剣』と彼女が当たって、死ぬようなことは望ましくない。
というか、彼女としては、そんなことは絶対に嫌だ。
だから、あらかじめその危険性を示唆した上で、それでも自分と闘いたいのかを尋ねることにした。
「凜は……ジャンルは剣だとして、私と闘えない可能性どころか、死ぬ可能性があるとして、それでも私と試合をしたい?」
いつになく真剣に答えた彼女に、その危険性を再認識させられるのだが、最後に言った『私と試合をしたい?』という言葉に、その恐怖心すらかき消された。
思い返してみれば、幾つか不可解な点も合った。
例えば、『京子が“ラグナロク”のことを知っている』という矛盾とか『思い返してみれば、自分の話しを聴いていた京子の口角が少し上がっていた』のような、いつもの彼女とは少し違う点がある。
それらのことから、芽上凜は『京子も恐らくラグナロクに出る』ということを、今更ながら理解し「ねぇ、もしかして京子も……」と言った時、彼女は椅子にかけていた、薄手のコードを持って立ち上がる。
「えぇ、私も出るわよ。凜を心配させたくなかったから言わなかったけど、あなたも関わっているなら、隠す必要もないしね。
まあ、最終的に決めるのはあなただけど……私はあなたと、凜と競いたいわ。
そして、あなたに勝って、ラグナロクでも優勝して私とロイズが、アロンダイトが最強だと証明するのよ」
じゃあ、お互い言いたいことも言えたし、出ましょうか。と付け加え、鍵を回しながら芽上凜に出ることを促し、彼女が生徒会室から出ると、鍵を閉めて職員室に返した後、学校を後にして、坂を下りたところにある信号で二人は別れた。