複雑・ファジー小説
- Re: あやかしの花嫁 ( No.7 )
- 日時: 2012/01/15 14:50
- 名前: 刹那 (ID: vWRv9TUU)
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「さて……まずですが、あなたは何をしてこの世界に来ましたか?」
李王の物腰はとても柔らかかった。
「神社に肝試しに行ったら、そこで何か強い引力に引かれたような……。それでこの世界に……」
「あやかしはその昔、人間と共に生活していました。ですが、人間達には自分達にない力を持つあやかしは害をなす者にしか見えなかったのでしょう。人間達はあやかしを殲滅しようとした。それにいち早く気付いたあやかし達は自分達で新たな世界を切り開いたのです。それがこの世界です。その時先陣を切ったのが〝鵺(ぬえ)〟と呼ばれる一族です。そして鵺がこのあやかしの世界の支配者となったのです。皇様はその鵺の末裔で御座います。先程あなたがたを襲った〝鴉〟も鵺の親族。私達〝八咫烏〟もそうです」
「〝鴉〟は気が荒い。数年前に権勢を失ってからは迷い人を襲い、私腹を肥やしていると聞く。いつか
は仕留めなくてはと思っていたのだが……」
迷惑を被るのはいつも私だ、と皇は大きな溜息を吐いていた。
「この世界は人間界とは時空が違うんですね……」
「はい。ですが……」
そこで李王は言葉を濁した。
「時空には必ず亀裂が生じます。それが何故かは分かりませんが……。その亀裂を封印した地をいくつか人間界に存在します。そして、その封印が何らかによって解けた。そしてあなたが神社に迷い込んだ時、亀裂があなたを迷い込ませたのでしょう」
神流にはよく分からなかった。
だけど、神流がここに来たのは事故だということは確実だった。
「じゃぁ、戻る方法はないんですか?」
「残念ながら、亀裂はもう修復されてしまっています。次の亀裂が生じるのを待つしかないでしょう」
「封印を解くことはできないんですか?」
「私達の力ではなんともなりませんね。申し訳ありませんが……」
「そんな……」
神流は絶望に打ちのめされた。
(私は、もうここから戻ることはできないんだ……)