複雑・ファジー小説

Re: あやかしの花嫁【コメください!】 ( No.20 )
日時: 2012/02/09 19:37
名前: 刹那 ◆V48onzVAa6 (ID: vWRv9TUU)


 お説教が終わっても、そう簡単に解放してくれる筈もなく神流は部屋に半分監禁状態にされた。
(うう……)
 神流は項垂れることしかできなかった。
(そう言えば、皇はどうなったんだろう)
 もしかしたら、神流よりももっと酷い処置を受けているのではないか。
 神流は少し不安になり、真樹がいなくなった隙を狙って神流は扉を開けた。
 回廊には誰もいない。
『王の室は神流様の部屋の向かいの棟にございます』
 ふと、李王に言われた言葉を思い出した。
 この城は無数の棟で結ばれている。
 中央にあるのが政務を行う光の棟、その右隣には王である皇の自室の棟がある。 
 さらにその皇の自室の隣にあるのが、今神流の住まいとなっている棟だ。
(右隣に向かえばいいんだよね……?)
 神流は足音を立てないように隣の棟へ向かう。

「皇様、失礼します!」
 すると、息せき切って李王が皇の部屋に入る所が見えた。
(え?何!?)
 神流は慌てて李王から死角の壁に張り付く。
 そして、李王が部屋に入ったことを見届けると神流は皇の部屋への扉へ張り付き、中の会話を聞こうとする。

                  『……何?』
                  『〝鴉〟の反乱です。恐らく……』
                  『戦に、なるのだろうな』
                  皇の声が、重たい。

(戦……!?)
 皆殺しという言葉を聞いたときと同じく、全身が総毛立ったような気がした。
 すると、室内から足音が聞こえる。恐らく李王が用件を伝え、部屋を出ようとしているのだろう。
(まずい……!)
 部屋にいるはずの神流がここにいたら朝程度のお説教では済まないかもしれない。神流は走り去った。

 運良く真樹が帰ってくるより少し早く部屋に駆け込むことが出来た神流は、ただただ不安にかられていた。
(戦って……どういうこと?)
 〝鴉〟とは最初にこのあやかしの世界へ神流が降りたったときに襲ってきた者のことだろう。
 戦……。つまり戦争になるということだろう。
(戦争って……。殺しあいになるの?)
 嫌だ。
 神流の中の本能が、拒否反応を示す。
(本当に、戦争になるの……?)
 日本では絶対にもう起こらないと約束された戦争という言葉。
 だがここは日本ではない。しかも異世界で、あやかしばかりの世界……。
 戦が起こるということも有り得なくはない。だが、怖い。
(戦争、なんて……)
 神流は、ただその意味について考えることしかできなかった。