複雑・ファジー小説

Re: あやかしの花嫁【参照300感謝!! コメントください】 ( No.34 )
日時: 2012/03/08 20:40
名前: 刹那 ◆V48onzVAa6 (ID: vWRv9TUU)


 —————ギンッ!!
 斧の刃と剣の刃が重ねられた音が響き渡る。
「……ッ」
 剣を弾かれそうになったのは皇だった。
 屈強な紫雷も轟風の操る斧の前では威力が弱い。
 集中しすぎていたのか、背後から数十人という〝鵺〟の軍が後援してくれていたことに気付かなかったくらいだ。
「修行が足りんな。玉座に座って悠々としていた時間で鈍ったのではないか?……ッ」
 話している隙を狙い皇は轟風の脇腹へ剣を突き刺そうとする。が、すんでのところで躱されてしまう。
「甘いな……。まぁ少しは褒めてやる」
 口元を拭い、轟風は微笑む。
「それはありがたいッ……!」
 会話の途中でも遠慮無く殺さんと頭上から振り降りてくる刃。
 それを避けつつ、皇は剣を振りかざす。
 だが、ふとツ、と轟風が言の葉を紡ぐ。
「—————風龍突破」
 そして、途端轟風の周りに風が集う。
 厳密に言えば、轟風の持つ盾に集っているのだ。
 銀色の風が轟風を包み込み、そしてそれが最大限にまで高まる。
 その間、皇はその気迫に圧され動くことができなかった。
 すぐ首を取ることのできる距離にいるのに。
(何だ、これは—————!?)
 ふと皇の脇をヒュウ、と風がかすめた。
(—————)

「う、わぁぁぁぁあっ!!」
 そして、すぐ背後から何人もの叫び声が重なって響いた。
 皇が声の方を振り向くとそこは煙のようなものが立ちこめ、何が起こったのかよく分からない状態だった。
 だが自然と煙も晴れ、無残な現状が浮き彫りとなる。
「なッ……」
 唖然とすることしかできなかった。
 その煙の奥にあったのは、轟風の一撃に倒れた、後援を行ってくれていた全員の〝鵺〟の軍の者だった。
 立ち尽くすことしかできない皇に、轟風はしっかりと皇の瞳を見据えながら言う。
「臣下も守れぬとは……愚かな」
 轟風と皇の実力の差。
 それを明確に裏付けられたような気がした。