複雑・ファジー小説

Re: 童話の国のアリス 第Ⅳ章 ( No.11 )
日時: 2012/04/29 21:35
名前: 竹中朱音 (ID: hsews.TL)

第Ⅳ章〜我儘女王様 前

アリスはチェシャ猫とマッドハッターと三月うさぎで大きなアーチ型の大きな赤レンガで作られた眼鏡橋を渡っている。
そう、ハートの女王様の城来ているのだ。なんでも「女王様にアリスの到着を知らせる」ためらしい…
アリスは橋の下の太い川を見て横のチェシャ猫にこう尋ねた。

「ねぇ、なんでこの川は真っ赤なの?」

「打ち首された罪無き囚人の血だにゃぁ〜」

ニヤニヤ妖しく笑うチェシャ猫。アリスは少し怖くなって、もう一度興味本意で橋から顔を出すように見てみて、またしゅっと顔を引っ込めた。
門の前に着くと、ハートとスペードのトランプ兵が長く鋭く光る槍を<X>形にしてとおせんぼした。

「用はなんだ!」

ハートの兵が大きく口を開けて怒鳴るように尋ねたので、三月うさぎが目を飛び出させるようにガっと見開き血走ってきたので、ハッターが丁寧に対応した。

「女王様にアリスをお伝えするのです。お通しください。」

ハッターが深々とお辞儀する真横で三月うさぎは落ち着きなく足をトントンさせている。チェシャ猫は興味なさそうにあくびを一つ。

アリスはぎろりと品定めするように見てくるスペードの兵が少し怖くて、チェシャ猫の後ろへササッと隠れた。
するとスペード兵が小さな声でアリスにたいしてこういった。

「こんなひ弱な女になにができる。またメイドがふえr…」


 ———カチャリ

レボルバーが回る音がした
白銀の銃口がスペード兵の額に向けられている。その銃口の奥で弾丸がじっと今か今かと待っている。

「口を慎め下郎共!」

針のような目で狙いを定める

「ハッターさん!止めて!」

拳銃を持っている逆の腕を急いでつかんでアリスが止めに入った。ハッターはまたハッとして、拳銃をササッと胸ポケットに隠す。

「水銀の量を減らさなきゃね…」

アリスにはよく理解できなかったが、たぶんティーパーティーのときにティーに入れてた銀の液体の事だと悟った。


「——っ、…よ…よろしい。許可する!」

スペード兵はすっかりおびえてしまって、声は震えて目はきょろきょろ泳いでいる。

スペードとハートの兵が槍を持ち直して、床にコンコンと二回同タイミングで鳴らすと、トランプ兵の後ろにある大きな鉄門がギイギイとこすれる音を立てながら開き始めた。



門を入るとまず一つ目に白い薔薇の花を赤いペンキでペタペタ塗る気の弱そうなクローバーとスペード兵…それと…

「おーおーあいつぁ8人目のアリスさんじゃないか?ヒヒヒwwウヒィ」

赤と黒のメイド服のエプロンに<8>と書かれた女の子は指差した三月ウサギを見ると、目を丸くして薔薇の木の茂みにそそくさと隠れてしまった。

「彼女恥ずかしがり屋さんなの?」

「なってみたらわかるぜ。真っ赤になってしまった気持ちがにゃ」

チェシャ猫は少し狂気じみた目で<8人目のアリス>をジトォと見つめてニタニタ笑う。

「さぁ行こう!アリス!」

ハッターが楽しげに前に立ってずんずん歩く。だけどどこかアリスにはさみしげに見えてならなかった。
ペンキまみれの赤いバラが植えられている道を歩いていく。歩いてる途中に沢山エプロンに数字が書いているメイドさんを見かけた。ざっと6人。そうこうしているうちにお城の前。

お城は堂々と立っており、威圧感がある。
ハッターが大きな城門の前に来ると、アリスの目線になってしゃがみこむ。

「アリス、君がどんな選択をしたっていい。君の自由だ。だけど…」

そこまで言ってハッターはうつむき、スっと立ち上がった。
そしてまたあの笑顔で門を思いっきり押し開ける。

「女王様!アリスを連れてきました!」

ずんずんと前を進むハッターの後ろでチェシャ猫は大あくびしながらアリスと一緒に歩く。三月うさぎは相変わらず落ち着きなくびくびくしながら歩く。そのせいか途中足をくじきそうにもなっていた。

「ほぅ…来たのか…」

王座に座っていたのはなんとアリスより幼い(推定6歳)ピンクの髪をしている子だ。ティアラが少し大きい。
その横には黒い軍服に足元まである長いマントをしている左目を隠した黒髪の男の人。たぶんあれがジャックだ
二人とも右目の瞳孔が不思議なことにハートの形をしている。

「ふむ…確か49人目だな。」

女王は偉そうな態度でアリスをじろじろ舐めるように見始める。
アリスはじろじろ見られることがすごく不愉快だったので、つい小さな声で思ったことを言ってしまった。

「小さいくせに偉そうね。」

—そのとき女王の耳がピクっと動いた。

「なに!身分をわきまえろ!打ち首だ!!!」

その大きな声と同時にジャックが赤い鞘から金のレイピアを素早く出してアリスに向けた。