複雑・ファジー小説
- Re: 童話の国のアリス 第Ⅵ章 ( No.14 )
- 日時: 2012/04/29 21:40
- 名前: 竹中朱音 (ID: hsews.TL)
第Ⅵ章〜青の預言者が言うには… 前
女王に言われた通りに南の森に着いた。
奥は深く暗くあまり招待されている雰囲気ではないのは明らかなのだ。
森の横にあるぼろぼろの木の看板には手書きで文字がかすれているがメッセージが書かれていた。
「青い預言が住む森。 あなたも未来が知りたいのか?」
アリスはその看板の文字を声に出して読み上げ、ここが青い芋虫が住む森と再認識した。それはいいのだが…
「私虫が苦手なの…」
アリスはあまり乗り気ではない。
昔おばあさまのガーデニングの手伝いをしている時手に虫が乗ってしまったのがトラウマでめっきり虫が大の苦手なのだ。
がくがく震えるアリスを見てチェシャ猫がニタニタと笑う。
「猫は虫も食すって知ってるかにゃ?」
「いやぁ!ダイナはそんなことしないわ!だって毎日キャットフードを与えているからね!」
「…まずそ。」
アリスは大好きなダイナがそんなことしていないと完全否定した。
チェシャ猫はつまんなそうにべろで唇をなめる。
アリスは森の奥を眺めてぼやく
「あぁ…ハッターさんがいればぁな…」
(ハッターと三月ウサギは帰ってしまった)
それを聞いたチェシャ猫。
「猫も頼りになるぜ?お姫様?」
「…薄情猫…」
「にゃぁは♪」
アリスはまだあの城の出来事を音にもっているのか口をつんととがらせてチェシャ猫から目をそらす。
でも少し心のどこかでその言葉が嬉しかったのは内緒だ。
チェシャ猫は相変わらず怪しげに笑い目を三日月にさせる。
さて、森に入るとしよう。
森の中は薄暗く、木と木の間から漏れる外の光が道を照らして、そこがまた幻想的だった。
空気もよく澄んでいて、色鮮やかでどこか毒々しい大きなキノコが何個もよく育っている。
しばらくすると遠くから微かに青く細い煙が遠くからやってきた。
「なぁにこの煙?」
ふわふわと道しるべのようにやってくる。
「あと少しだぜ。」
そういって青い不思議な煙を手で払いのけながら後をたどって行く。
段々煙の微かな青は奥に行くにつれて色が濃くなってゆく。
ついでに匂いもきつくなり、煙の正体はニコチンやヤニのような、お父様が吸っていたタバコに近い匂いになってきた。
そうして長い長い森の道を進むと煙の出どころと広い空間にたどり着いた。
大きく青々とした葉っぱにちょこんと座っている青いフードの少年。その小さな手には高そうなガラス細工の瓶の水煙管を吸っては吐いている。
少年は目を針のように鋭く細くしてアリスに尋ねた。
「主は誰だ?」
アリスは心臓がどきりとして無礼が無いように丁寧なあいさつをしてみた。
「ごきげんよう、アリスです」
そういってスカートのすそを両手でつまんで軽くお辞儀をした。
「…あの…失礼ですがあなたのお年で水煙管は吸ってはいけないのでは?」
アリスはまじめゆえについ言ってしまった。
だって少年はどう見ても7〜8歳の少年なのだ。にしてはずいぶんふてぶてしく落ち着いている。
少年は口から金のパイプをとって煙を長く吐きながら眉間にしわを寄せる。
「女王との契約なのだよ。女王は青の芋虫(我)の預言を求め生かしている。」
「…ようするに契約のせいで子供の姿に?」
「<せい>ではない。5割は女王の命令 5割は我の願。我はただ星の言葉を我の口で伝えるだけの事。」
アリスは青虫の言うことが上手く理解できなかったが、何となく聞き直すと無礼だと思い口をふさいだ。
しばらくの沈黙。
あんなに入り口で偉そうに話していたチェシャ猫はクネクネした大きな樹によしかかり目を閉じていた。
アリスと青虫だけの空間は静かに時を刻む。