複雑・ファジー小説

Re: 童話の国のアリス 第Ⅵ章 ( No.15 )
日時: 2012/04/29 21:42
名前: 竹中朱音 (ID: hsews.TL)

第Ⅵ章〜青の預言者が言うには… 後


「何をしに此処へ来たのかね」

先に口を開いたのは青い芋虫。
目を細めてパイプを口に入れる。

「え…それ…は…あ…あれ…?」

アリスは何も言えなかった。
自分は何をしに此処へ来たのか。
女王に従えば「女王の願いをかなえるため」という理由ができる。
女王の命令に背いた今。

アリスは何をしにここへ来たのか。

童話の姫たちを助けたそのあとは?

そもそも元の世界に帰れるのか?

私はここにいていいのか?

急にむなしさがアリスをどっとおそう。

どんどん謎ナゾがアリスをぐるぐる取り巻く。


青虫がつむっていた目をゆっくり開いてアリスをじっと見つめる。

「——…なら我が与えてやろう。主は女王に背いて姫を助ける。そして終わらせるのだ。それが主の宿命としようじゃないか?」

「終わらせる…とは?」

「それは主が決めることだ。」

「でも私に出来るかしら?」

アリスは両手を組んでもごもご手を動かす。
アリスの昔からの癖だ。困ると昔からこれをやる。

青虫はまたゆっくりと水煙管を吸って吐いた。

「主が進まなくては、人生という本のページは進まない。」

そういうと青虫は眠そうな目をこする。




「言っておくが我は主の味方ではない。 が 敵でもない。このブローチがある限り預言にも限りがある。」
 
そういうと青虫はフードを止めるように真ん中に着いた青いホープダイヤモンドのような石の見事なブローチを見せてきた。
きらきら輝きを放っている。

「綺麗ね。どうしてブローチがあるとダメなの?」

「女王が仕掛けた口の滑り止めのような石だ。女王に大きな不利を与える発言やアンチをすると石の呪いが解けて老死してしまう呪いがかかっているのだよ。」

そうして青虫は両手で大事そうにブローチを包む。

つまりは青虫も女王と同じくかなり長い間生きているが、体(器)が若いおかげでかなりの年月を過ごしているのだろう。とアリスは考えた。



「では主に預言を。ハッターと三月主催のティーパーティーへ向かうといい。主がついいたころにはちょうど<白の護衛>も主の帰りを待つためにティーをたしなんでいるであろう。」

そう言い残すと青虫は青い煙とともにゆっくりと姿を消した。

あんなに存在感があった青虫が乗っていた葉は青虫が消えるとただの雑草に見え、青い煙にほんの少し慣れきた。



「<白の護衛>ねぇ〜」

「?!”」

アリスはびっくりして後ろを振り向くとそこにはニヤニヤしたチェシャ猫。
いつの間にか後ろへ立っていたのだ。

「まったく!寝ていたでしょ〜!」

「猫は寝るのが大好きにゃぁ〜♪ さ、ハッター達のとこへ戻ろうぜ」

「さっき青虫との話聞いてた?」

「猫には理解できませ〜ん」

チェシャ猫は自由気ままに歩きながらアリスの後ろを歩いて青虫の森を後にした。