複雑・ファジー小説
- 童話の国のアリス 第Ⅰ章 ( No.2 )
- 日時: 2012/04/29 21:28
- 名前: 竹中朱音 (ID: hsews.TL)
第Ⅰ章〜さぁアリス!ティーパーティーを始めよう!
アリスは今日もうかない顔で二階建てのバスの柔らかい座席に腰を掛け、革でできた茶色のスクールバッグを膝の上に乗せている。学校で今日も嫌がらせをされたそうだ。
今日なんか嫌いな女の子に先生の所へ向かおうと走ったとき足を引っかけられて恥をかいてしまったのだ…
そんなアリスの楽しみと言うと、今向かっている国立の大きな図書館で1時間ぐらい過ごすことだ。ちょうど今その図書館についた。アリスは「よっ」っとバスを降りてタイルの上を歩いていくと、白をメインとした大きな国立の図書館が堂々と立っている。ステンドグラスのマリア様が今日もアリスを微笑みながら見つめている。アリスはブロンドのボブの髪を手櫛で整えてから、透明な自動ドアに入っていく。
中は大理石の床だ。大きな噴水のあるホールの隣には本が何百冊と並ぶ本棚がいくつもある。アリスはしばらく本棚を端から端まで眺めると、本棚の隣にあった木の小さな梯子に上ってある本を手に取った。
「アリス…?」
そう小さく呟くと、こげ茶の固い表紙にはこう書かれていた。
</////の国//アリス>
残念ながらかなり古いのか、題名のほとんどが読めなくなっている。
だけどアリスにはちょっとわかった。
「きっと<不思議>か<鏡>が入るのね!」
そういうとその本をもって木の梯子をゆっくり降りて、その本を今日読もうと決めたのだ。だけど、今日放課後に入っていたクラブ活動のせいで図書館では見れず、結局借りて家で見ることにしたのだ。たった今は(4時30分)アリスの家は(5時00分)までに帰らなきゃママがカンカンになってアリスを叱る。これがものすごく怖いのだ。
歩いて25分してようやく家に帰ってきた。小さく「ただいま」といった。外はすっかり紅い夕焼けの空だったのだ。家の中に入ると、飼い猫の白いふわふわしたダイナがアリスの冷たい右足にすり寄ってきた。「ふふ…」とダイナを撫でてアリスは階段を駆け上り、自分の部屋に入って行った。制服を着たまま木製のベッドに敷いてある羽毛のお布団の上に寝転がり、スクールバッグからさっき借りた<アリス>の本を取り出した。ダイナも大好きなご主人、アリスの顔の横で丸くなって目を閉じたのだ。
ページをパラパラめくると、漢字や文字が思ったよりも多く、10歳には少し難しいのだ。だけどそんなことより、アリスは違うとこがおかしいと思った。だって、表紙は題名がまともに読めないほどぼろぼろなのに、中身は新品同様、真っ白な紙なのだ。それがアリスにとって不思議でたまらなかったのだけど、早く本を読みたかったアリス。小説に目を向けたときだった。
小説からものすごい風が吹いて、ブロンドの髪がふわりと後ろへ風に乗った。風がものすごいせいで、アリスの眼はすっかり乾ききってしまい、めをギュッとつむると、風が止み、目を開けるとそこは広い広い草原だった。
青々と緑の草原が広がり、所々黄色の小さな西洋タンポポが咲いている。よく見ると、遠くのほうに大きな大樹がぽつんとある。
アリスはしばらく意味が解らなく放心状態になることしかできなかったのだ。
風は緑の草を走り、タンポポを優しくなでて、アリスの髪、スカートを揺らす。
その時、少し遠くの草がカサガサと動いたものだから、アリスははっとしてその方向を向くと、そこには真っ白なウサギがいた。だけどただの白うさぎじゃぁない。横に置いた卵のように大きく藍色の目玉、右の眼には金のモノクルをしており、真っ白な燕尾服を着こなしている。一番おかしかったのはウサギのくせに人間みたく二足歩行なのだ。ウサギは肩にかけていた金の懐中時計を見て、目玉をゴマみたく小さくして、今度はウサギらしく四つの足で跳ねて走って行ったのだ。
「あ…!」
と声が出たときにはもうアリスはウサギを追いかけ走っていたのだ。ひたすら風を切る音と草を踏みしめる音。ウサギは大樹に近づくとまるで雪が解けるように一瞬にして消えてしまったのだ。
アリスはウサギが消えたあたりまで近づくと、ぎょっとして目をお皿のように真ん丸に見開いたのだ。だってアリスの皮のローファーの靴の1cm先にはシャベルじゃぁ2か月以上かかるぐらいの深い深い穴がぽっかり空いていたのだ。穴の先は暗い暗い闇闇。ひたすら先の見えない闇だった。
「だけどもしウサギがこの穴に落ちてしまっていたら…」
アリスはどうしても気になり、四つん這いになって穴に顔を突っ込んでみた。穴の中から冷たく刺さるような風が吹いている。その風はどんどん強くなっていく。
どんどんどんどんどんどん…
気が付いた時にはもう遅かった。アリスは穴の中に落ちてしまった。
「いやあああああああああああああああああ!!!」
いくら叫んでも闇は続く。真っ黒な手がアリスを引きづり混むように。下へ下へ下へ…
そのうち土のくぼみに火が付いた蝋燭やら明るいランプが多くなり、穴の中はオレンジに照らされた。安心したのもつかの間。次はどこからともなく、お皿や欠けたマグカップ、ワイングラスにワインの瓶、コルクと木製の大きな机、白いレースのテーブルクロスに胡椒、イチゴとブルーベリー、あとマーマレードのジャムの入ったガラスの小瓶とマーガリン。ピアノまでも落ちて来てアリスは死に者ぐるいでそれらを空中で上手によけたのだ。そうしていると、
ドッシーーーーーーン!
と床にアリスが叩きつけられた。