複雑・ファジー小説
- Re: 童話の国のアリス 第Ⅶ章 ( No.25 )
- 日時: 2012/04/29 21:47
- 名前: 竹中朱音 (ID: hsews.TL)
第Ⅶ章〜時間仕掛の白き護衛 後
アリスの手には白く、青いダイアが付いていて、ウサギの耳のような剣の細工に柄の下にはしっぽのようなふわふわした丸いファーが付いていた。
今まで持ったことのない重みと感触…
「この剣は本物なの?」
「えぇ。それであなたの意思にそぐわない物を斬り刻むのです。」
「で…でもこれに似たおもちゃをお隣のミッチェルが持っていたわ!」
白うさぎは ふん… と鼻で息を吐くとじろりと目が泳いでいるハッターをにらんだ。
「では手始めにこの男を斬ってみてはいかがですか?」
白うさぎはニコリと笑って手先をハッターに向けると、ハッターは目を飛び出させる勢いでいきなり大きな声で怒鳴った。
「こ…この鬼畜うさぎ!」
「黙りなさい 狂人」
「ふん!」
そういってハッターはチェシャ猫とまったく同じように何か言いたそうだったが、おとなしく顔を机に伏せた。
「や…やめとくわ。」
「そうですか。残念です。」
白ウサギはまた紅茶を飲んで、茶菓子のクッキーをパクリと食べた。
アリスは自信がなかった。
思えば一冊の本から始まって、いろいろ大変な目にあったが、今回ばかりはアリスも困った。
剣なんか渡されたってアリスは人を殺した経験なんて勿論ないし、剣すら持ったことが無い。
はたして10歳の女の子が人を斬れるのか。
「私にできるかしら…」
アリスははっとした。つい思ったことを口に出してしまった。
あわてて口を押えようとして剣がガシャンと重い音を立てて地面に落ちる。
白うさぎはじっと紅茶に映る何かをじっと見つめてカップを机に置いた。
「慣れ…ですよ。嫌でもあなたは何かを斬らなくてはならないのです。人や怪物。未来。」
白うさぎはそういうとまた紅茶を飲み始めた。
またしばらくの沈黙。
アリスはきになることがあった。
「あの…白うさぎはハートの女王の事どう思う?」
こんなこと聞いたら不謹慎だろうか。
女王の城にいたんだから女王のほうが私よりも—…
「ええ。好いてはいません。」
思ったより即答ではっきりした答えにアリスは困った。
予想外だった。もう少し曖昧な答えかと思ったのだが。
「どんなとこが?」
「そうですね。女王に強い呪いをかけられてしまいました。呪いの内容は言えませんがね。」
アリスは「呪い」という言葉に引っかかった。
青い芋虫も「呪い」をかけられていた。
女王はいったい何者なのか。そんなに力が強いのか…
アリスが気づくとさっきまで紅茶を飲んでいた白うさぎが燕尾服のリボンを直し、トランクケースを持って帰る支度をしていた。
「どうしたの?」
「時間です。 アリス。明日8時00分00秒に青い芋虫の森に来なさい。貴方の初陣です。」
「はい…!」
「それと—…その剣は集中を解いて強く握る剣とまたダイアの中に封印されます。」
「あ…はい!」
言われた通りアリスはゆっくり目を閉じてリラックスして剣をゆっくり握ると、まるで消えるかのように光の粒となってダイアの中に光が入って行った。
「では…」
白うさぎは早歩きで来た道を忙しそうに帰って行った。
「まったく!なんだい偉そうに!」
「あいつは昔っから大嫌いだぜ〜」
白うさぎが見えなくなるとともにいままで顔を伏せていたハッターとチェシャ猫が勢いよく顔をあげて、白うさぎがいたときとは大違いな態度で白うさぎが帰って行った方向に向かって、舌をだして「べー」としたりしていた。
どうやら白うさぎは2人にはあまり歓迎されていない様子だ。
アリスはそんな2人を苦笑した。