複雑・ファジー小説

童話の国のアリス 第Ⅱ章 前 ( No.3 )
日時: 2012/04/29 21:29
名前: 竹中朱音 (ID: hsews.TL)

第Ⅱ章〜奇妙な花と笑う猫 前

アリスはしばらく背中の激痛でうなりながら猫のように丸く蹲っていたが、痛みが治まるとゆっくり立ち上がってスカートのホコリをぱんぱんと落とした。

———さて、どうしたものか…
アリスが次に来たところは、チェス盤のように規則的に並べられた白と黒の床に、天井に吸い込まれるかのようなデザインのモノクロの壁紙。黄金色の金具にクリスタルが飾られ、蝋燭が何本もつけられており部屋を明るく照らしている。
アリスが素敵なシャンデリアを見ながら不意に後ろへ一歩下がったとき、
         ガンっ!
アリスは腰に何かが当たりぐるっと振り返ってみるとそこには、綺麗なガラス製の丸いテーブルと、小さな薔薇と透明な黄色の液が入ったコルク栓の小瓶、そして小指ほどの大きなの銀の錆びた鍵が一つ。
そしてガラスのテーブルをよぉく見ると、テーブルの足元に小さな白いケーキ。潰さないようにそっとつまんでテーブルの上へ。
アリスは心当たりがあった。それを自分に言い聞かせるように言い始めたのだ。

「確か、確かね、アリスの小説ではこのドリンクを飲むと小さくなって、あのケーキを食べると大きくなるのよね、で、この部屋に小さな扉があるはずなの…。」

そういうなり、アリスを囲むようにある7つの大きなドアをぐるっと見渡し、最後にドアとドアの間にある不自然なワインレッドのカーテンを開けると、そこにはアリスの靴と同じ大きさの小さなドアがあった。アリスはニヤっと嬉しそうに笑う。
まず錆びた銀の鍵をポケットの中へ入れ、ケーキももう一つのポケットへ入れた、そして小瓶の首についたカード<Drink me>を確認し、コルクをキュポン!と開けると、勢いよくそのドリンクを飲み干した。
するとどうでしょう。アリスはみるみる小さくなり、最後には真上を見ないとガラスのテーブルが見えないほどにまでなってしまいました。ここまではアリスの予想通りだったが、予想外の出来事が起こった。

「私の洋服が巨人が着る大きさになっているわ!」

そうです。アリスの周りには、大きいぐしゃぐしゃになっている自分の服があったのです。アリスが小さくなったためでしょう。
取り合えず、服の飾りの白いリボンをほどいてそれを体に巻きつけ、次に鍵とケーキを両手でかかえ、カーテンに隠れているドアを見つけ、鍵を刺した。
左向きに軽く手首を動かすと、奥から「がちゃん」と音がしたのでドアノブをひねりながら押す。そこには庭が広がり、アリスよりはるかに大きい雑草や、色とりどりの花が植えられていた。アリスは嬉しくなり無意識に<Eat me>とレーズンで書かれたケーキをパクリと食べてしまった。すると次はぐんぐん大きくなり、元のアリスの大きさになったのはいいが、真っ裸なのだ。幸い花がアリスの胸元の大きさだったから、花に水をやりに来るメイドさんとか家主には裸を見られない。
が、やっぱり裸は問題だと思いさっきいた小さなドアに腕を突っ込んでみる、あと3cmぐらいのとこで腕が突っかかって進まないのだ。
アリスはどんどん青ざめ、とうとうその場に小さな鼠のように蹲ってしまった。

「ねぇ、あの子裸ね!」

「あらあらホント!なんてかわいそうなの」

「あのこ、あのドアから来たならアリスじゃぁない?」

<クスクス…クスクスクス…>